れんが造り倉庫の解体進む 明治期建造、市「老朽化で」

 長崎市松が枝町に明治期に建てられたれんが造り倉庫「松が枝町公共用地建物」の解体作業が進んでいる。異国情緒を漂わせるこの建物は「レイク商会倉庫跡」としてまち歩き観光「長崎さるく」でも親しまれていた。所有する長崎市は老朽化を理由に挙げるが、地元住民からは「残念」「もったいない」と惜しむ声も上がっている。

 長崎市と関連の文献によると、倉庫は、明治中期ごろに米国人のジョージ・レイク、エドワード・レイク兄弟が雑貨商を営む際に建造されたという。3階建ての洋館で市が1995年に民間から取得。当初は公共施設として活用を予定したが、老朽化が激しく建物保存の費用が高額になることから活用できずにいた。

 長崎市や解体業者によると、2、3階部分の床が広く崩落し、梁(はり)が損傷するなど特に内部の損傷が激しかった。解体に関して市が地元連合自治会に意見を募ったところ「やむを得ない」との意見でまとまったという。

 長崎市は本年度一般会計当初予算に倉庫の解体関連費約3400万円を計上。建物の記録保存をした上で今月23日から本格的に解体工事を始め、既に屋根や外壁の一部が取り壊されている。

 異国情緒ある赤い外観は観光客にも親しまれ、長崎さるくのスポットの一つだった。松が枝町に50年以上暮らす野田千鶴子さん(83)は「安全面を考えれば解体も仕方ないが、少し残念」。別の80代女性は「赤いれんがの由緒ある姿が好きだった。もったいない」と話す。

 長崎市は来年1月までに解体を終える方針。跡地の活用策は未定という。

解体前の倉庫=2017年1月、長崎市松が枝町(同市提供)
解体が進む倉庫。屋根や外壁の一部が取り壊されている=長崎市松が枝町

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