裏側まで染まる! 諫早の旗専門「美染」が独自技術

 旗の専門店「美染」(長崎県諫早市小船越町)が、ポリエステルツイルと呼ばれる生地の素材への昇華転写ではほぼ不可能とされていた「裏抜け」を可能にする技術を開発。昨年9月の専門見本市、プレミアム・インセンティブショーに出展したところ、業界の反響が大きく、全国各地から問い合わせが相次いでいるという。

 前田豊弘代表(59)によると、一般的なポリエステルツイルの旗は裏面の色が薄くなるが、美染の技術では裏抜けさせることで裏面までしっかりと染まる。片面のみの印刷で両面の効果が得られるためコストが抑えられ、通常のプレス盤の規格では長さが最大で3メートルの旗しか作れなかったが、プレス盤を使わずに10メートルぐらいまで制作可能になった。

 元々は綿素材を手染めしてのぼりやのれん、大漁旗などを作っていたが、15年ほど前からポリエステル素材が主流になり、昇華転写によるデジタル染色に。売り上げが激減していく中、生き残りを懸けて技術開発に着手。約5年間掛けて商品化に成功した。同様の技術を持つ会社は美染を含めると全国で2社しかないため、大手プリンターメーカーなどが、大村市陰平町の工場へ視察に訪れるようになったという。

 前田代表は「小さな会社だからこそ技術開発に専念できた。綿素材に裏抜けを可能にする技術にも挑戦したい」と意気込んでいる。

長さ10㍍の旗も制作できると語る前田代表=大村市陰平町
一般的な旗(左)と裏抜けした旗

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