金属行人(10月25日付)

 先週、世界鉄鋼協会の年次大会に出席した。短期課題としては米中貿易戦争の影響対応などが関心事だが、中国経済の減速懸念、地球温暖化問題に対応した高炉プロセスの将来像など印象深いテーマが各所で話題に上った▼環境問題では、特に欧州鉄鋼メーカー幹部の問題意識が予想していた以上に強かった。高炉還元剤として炭素の替わりに水素を使うべきことは分かっているが、どう実現するか。水を電気分解して水素を造るしかないが、結局コスト、経済性との闘いとなる。この分野は、日本ミルが世界鉄鋼業界の中で技術先進力を発揮し、リードすべきテーマと思える▼環境対応では、鉄スクラップ活用も大きなテーマだ。2050年には世界の半分の鉄が鉄スクラップから造られるとの試算が示されたが、鉄スクラップの回収・再利用ネットワークが新興国で構築できるか▼中国鉄鋼メーカー首脳の話も興味深かった。「国際戦略を積極化し、リポジショニングを行う。他国へ投資を行い、鉄鋼の製造そのものからお客様ニーズに応える企業へと革新的な変化を遂げたい。バリューチェーンを拡充していく」との発言は、ひと昔前の中国ミルとは様変わりで驚きとともに脅威も感じた。

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