伝統野菜

 諫早四月大根、長崎赤かぶ、長崎紅大根、雲仙こぶ高菜、赤首女山三月大根-。長崎の伝統野菜を作る長崎大の公開講座で受講生が栽培している品種の名前だ▲9月中旬にまいた種が芽吹き、葉を広げている。スーパーでよく見かける野菜と似ているが、いずれも長崎の気候風土の中で育まれてきた在来種。独自の味や香りを持つ▲市販の野菜はほとんど、異なる品種を掛け合わせたF1種と呼ばれる種をまいて作る。病気に強く収量も多いため、全国各地で栽培されている▲F1種は毎年種を業者から購入する必要があるが、伝統野菜は農家が自家採種する。育てた野菜から種を採り、それをまいて同じ野菜を育てる作業を毎年繰り返してきた▲伝統野菜はその地域にしかない貴重な品種。関心を持つ人がいなくなり、種から種へのリレーが途絶えれば、そのまま失われてしまう。そうならないよう、大切な地域資源の一つとして栽培を続けようとする動きが、本県の農家にもある▲そんな意義を広く知ってもらおうと開かれている長崎大の講座。台風で一部折れたり猫に荒らされたりと、時には関係者をひやひやさせながらも、キャンパスの伝統野菜はおおむね順調に育っている。その様子を見つめながら、種を次代につなぐ営みの大変さと貴さをあらためて実感する。(泉)

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