加奈子 × Nukeme - 禁断の多数決が私の全てじゃない。これからの私をみんなに見てほしい

物事を細かく考えることが好き

——加奈子さんにロフトのトークイベントに出演いただくのは、禁断の多数決での『禁断のお化け屋敷』ぶりですよね。

加奈子:そうですね。去年の7月以来ですね。

——現在、禁断の多数決は脱退されたんですか?

加奈子:はい。今年3月のライブで“第三期”禁断の多数決が解散することになり、私を含め一部のメンバーが脱退することになりました。

——脱退後、音楽活動は休止されていたんですか?

加奈子:また音楽活動を始めたいと思っていたのですが、次にやりたいと考えていることがなかなか進まなくて、実質的に活動休止状態にありました。

——では今回のトークイベントが活動再開の一発目になる感じですか。

加奈子:そうですね。

——自己啓発イベントということですが、今回のイベントを行うことになったいきさつを教えてください。

加奈子:実は去年の1月くらいに自分でイベントをやりたくて動いていたんですけど、実現に至らなかったんです。やりたいことはいろいろあったので、お誘いを頂いて今回のトークイベントをやることになりました。自己啓発イベントは、普段から私がいつも考えていることなんですけど。自分自身が物事を細かく考えることが好きなので、自然とこういった内容になりました。

——日ごろから悩みは多いですか?

加奈子:多いです。いちいち考えちゃうんですよね。あと、普段からインスタライブなどで、ファンの方からお悩み相談を受けることも多くて、私も悩んでいることはたくさんあるし、同じように悩んでいる人たちと集まってお話しようと思ったのも今回のイベントをやろうと思い立ったキッカケです。

——加奈子さんは女性のファンが多いと思うのですが、やはり質問も女性からのものが多いのでしょうか?

Nukeme:匿名のメッセージアプリだから質問者の情報までは分からないよね。

加奈子:そうですね。ただ、質問の内容からして比較的、若い人が多いと思います。

——どういった悩みが多いですか? 恋愛とか、人生とか?

加奈子:恋愛の相談もよくきますが、学校の悩みが一番多いです。就職しなきゃいけないけど、やりたいことがないとか、社会人だけどやりたくない仕事をしているとか。

——わりと人生についての重たい相談ですね。

加奈子:けっこう重たいものがよく来るんですよね。いつも、重たいものから軽いものまで、頂いた相談には全て答えていたんですけど、それを見て、「加奈子ちゃんは何でも答えてくれる」と思われたのか、いろんな相談が来るようになりました。

——前回、禁断の多数決で出演頂いたときに感じたのですが、自由なメンバーが多い中で、イベントの進行とか、お客さんからの質問にも真面目に答えてあげようとしていたり、ファンの期待に応えてあげようという姿勢が見えて、加奈子さんは責任感が強い人だという印象を受けました。

加奈子:それは多分、他のメンバーがそういうことが得意じゃないから、相対的に良く見えただけだと思いますよ。ただ、本当は私ももっと好きにやっても良いのかもしれないけど、こういった活動をしている以上、しっかりしなきゃっていう気持ちはあります。

脱退したからといって活動を辞めることもない

——今回、トークイベントを行うにあたって、真っ先にNukemeさんをパートナーに選ばれた理由はなんですか?

加奈子:Nukemeさんはもともと仲が良くて、何か一緒にできないかなと思ってたんです。けっこう一緒にやりたいこと話してたよね。

Nukeme:うん。事前に進めているプロジェクトがあって、今回のトークイベントもその流れですね。

——お二人の親交はいつからなんですか?

Nukeme:知り合ったのは、マルチネレコーズの「東京」っていうイベントをやってた時だったので、2014年ですね。一緒にやろうっていうそのプロジェクトの話が立ち上がったのは、加奈子ちゃんが禁断の多数決の脱退が決まった頃だった気がするから、去年の1月くらいだっけ?

加奈子:えっと。3月の解散ライブよりは前だったから、12月に私が脱退することが決まった後の1月とか2月とかだった気がする。

Nukeme:ちょうど加奈子ちゃんがこれから何をしようか、って考えている時だったよね。

——活動再開まで時間があったと思いますが、今後も音楽活動を続けていこうと考えていたんですか?

加奈子:もともと、「“第三期”禁断の多数決は解散」って言われただけなので、辞めるつもりはなかったんです。リーダーのほうのきさんがその時考えているイメージに合わせて、第一期、第二期とグループも変わっていくので、今回の第三期解散で私も脱退することになって。

Nukeme:解散総選挙みたいなものだよね。内閣をいったん解散して、また作り変えるっていう。

加奈子:なので、解散後は少し投げやりになっちゃって、もう音楽も全て辞めようって思ってました。でも、禁断の多数決での活動が私の全てじゃないし、音楽は子供の頃からやっていたので脱退したからといって活動を辞めることもないのかなと思うようになりました。それから今後の音楽活動について誰と一緒にやったら面白いだろうって考えてNukemeさんに声を掛けたりしました。

きっかけはゾンビが主役の歌詞

——一緒にどのような活動をしていきたいとか、今の時点でありますか?

Nukeme:まだ言えるようなことは特にないんですけど、歌詞を書いてみたいという願望があります。僕もNukemeBandというバンドをやっていて、ドローンというアンビエントとノイズが一緒になったような音楽を即興で演奏するんですけど、歌詞とかはないんですよ。というか曲とかそういう概念がないです。

——結構、長く活動されてますよね。

Nukeme:6年くらいやってます。アルバムを2枚出していて、1枚は全国流通してます。『Tower Mansion』というアルバムなんですけど、タワレコとか行けばあると思いますよ。最近だと「MEiSTER」っていうサウナがテーマのコンピレーションアルバムにも参加しています。

——サウナお好きなんですね。

Nukeme:はい、サウナーです。それで、自分のやっているバンドは歌がないので、歌詞を書きたいと言っていたら、いくつかそういった案件を頂けたんです。

——どのような案件だったんですか?

Nukeme:「おもちエイリアン」というキャラクターがいまして。

——「おもちエイリアン」?

Nukeme:その「おもちエイリアン」のアニメのDVDがありまして、エンディング曲の歌詞を僕が書きました。「おもちのかきかた」という絵描き歌です。

——そこで作詞への手ごたえを感じられたわけですか。

Nukeme:別にこれで手ごたえを感じたわけじゃないです(笑)。もうひとつ別件で、僕が歌詞を書いたけど事情があってリリースされなかった曲があって。ゾンビが主役の歌詞なんですけど、その歌詞を加奈子ちゃんがたまたま見てくれて。それで、この歌詞面白いと言ってくれたのがキッカケで、一緒になにかやろうという話になりました。

——ゾンビが主役の歌詞って珍しいですね。

Nukeme:“ダウナーな電気グルーヴ”がやりかたったんです。もしくは、“明るいゆらゆら帝国”。日常にあるサイケ、というのがテーマで。暗喩や異常なシチュエーションの積み重ねはあっても、全体としてはまったく意味がないというか。僕は電気グルーヴの歌詞がとても好きなので。

——あと、活動の一つに「ノイズカラオケ」もやっておられるそうですが、これはどういった活動なんですか?

Nukeme:カラオケはバンド活動とセットみたいな感じなんですけど。もともとクラブとかで、DJをやる代わりにカラオケをやっていたんです。それが後にバンド化したという感じです。

——歌う曲は毎回違うんですか?

Nukeme:前は季節とかイベントの内容に合わせて変えていましたが、最近はX JAPANの「紅」を歌っています。iPadのカラオケアプリとか使って歌うんですけど、バンドメンバーがカラオケの最中にノイズを演奏して邪魔を入れてくるんですよ。

——それがノイズカラオケということなんですね。今回のトークイベントでもNukemeさんの「紅」が聴けるかもしれない?

Nukeme:それはイベントの雰囲気次第ですね。なにせお悩み相談イベントなので。

加奈子:まだどんなイベントになるか分からない。

——たしかに、悩みを抱えて来られている方が多い中で、いきなり「くれないだー!!」と叫んでも何事だという感じですよね。

Nukeme:まあ、僕のカラオケはどこでやってもみんなぽかーんとしてますが(笑)。

電話番号公開芸

——Nukemeさんは普段、人から悩み相談を受けるほうですか?

Nukeme:面識のない人からいきなり、というのは全くないです。聞くのは好きなんで、友達とかなら積極的に聞きますけど。ただ、僕は自分の電話番号をステッカーにして配るという、“電話番号公開芸”をやっていて、たまに掛かってくるんですよね。それが悩み相談だったときはあります。

加奈子:それ面白い、私もやりたい(笑)。

Nukeme:大阪の大学生で、「今度東京に引っ越すんですけど、住むなら何駅が良いですか?」とか。

——(笑)

Nukeme:祐天寺をすすめておきました。

——これまで、Nukemeさんは顔出しをされていなかったと思うんですが、今後はもっと表に出ていこうという感じですか? なにか心境の変化などがあったのでしょうか?

Nukeme:今、彫刻の作品を作っているんですけど、テーマが自画像なんです。今までは作品と自分のパーソナリティを切り分けて考えていたんですが、自画像というテーマなので、僕自身がどういう人間なのかを一緒に打ち出したほうが、作品を読み解くきっかけになるんじゃないかと思って、このタイミングで顔出しをすることにしました。

——背景も含めた作品なんですね。今後はトークイベントなども出ていただけそうですか。

Nukeme:そうですね。僕はラジオもやっているのでトークは好きです。

——ラジオではどんなことを話されるんですか?

Nukeme:最近何が面白かったかとか、日常で起きたこととかなんですけど、聴いてくれている人からは、「スピってる」ってめちゃめちゃ言われます。

——スピリチュアルなんですか?

Nukeme:KNS目隠しラジオ、っていう番組名でPodcast配信していて、僕とデザイナーの鍵っ子さんとアーティストのシシヤマザキさんの三人でやっているんですけど、全員目隠しをした状態で喋るんです。そうすると視覚情報以外の感覚がどんどん研ぎ澄まされていくんです。3人ともサウナ——なのでサウナでどんなトリップ体験をしたかなど、客観的には理解しにくいけど、自分の内側で起こっている気持ちの変化であったり、感覚的な世界の話をよくするんです。その感覚に注目していくと、どうしてもスピりがちなことになるんですよね。

——目隠しにそんな効果が…。

Nukeme:目隠し面白いですよ。空間を広く感じられたり、自分の身長が伸びるような感覚がしたり。

——身長も伸びるんですか…今度、チャレンジしてみようと思います。

Nukeme:実際は伸びてないですけどね。

加奈子:幻覚や錯覚が起きるということ?

Nukeme:そんな感じ。

——Nukemeさんは本当にいろいろなことをやられてますけど、肩書はファッションデザイナーでよろしいですか?

Nukeme:ファッションデザイナー兼アーティストと言ってます。

イベントとこれからのこと

——本人を目の前にして言いづらいかもしれませんが、加奈子さんが思うみんなに知ってほしいNukemeさんの魅力はなんですか?

加奈子:いろんなことができる人だから、いまいち何をしている人なのかよく分からないと思われているかもしれないけど、やっていることのひとつひとつが凄く面白い。そこをみんなに知ってほしいです。

Nukeme:友人ですら、僕が何をやっているのか把握していないです。

——今回のトークイベント自体はどんなイベントにしたいとか、イメージはありますか?

加奈子:イメージ的には、私が自己啓発セミナーの講師で、お客さんは生徒みたいな感じです。私自身の悩みから立ち直る方法とかをみんなに伝授したい。あとは私がまだ解決できていない悩みをNukemeさんに聞いてもらったり。

——当日は客席から直接、相談を受けたりもされるんですか?

加奈子:直接言うのは勇気がいるから、厳しそう。

Nukeme:会場からインスタや質問用紙などで募集するかもしれないですね。名乗り出ても良いという人がいれば直接答えますが、なんとなく加奈子ちゃんのファンはシャイな人が多いと思う。

加奈子:匿名だから、誰にも言えないような悩みを私たちに相談してくれたら嬉しい。女の子特有の悩みも。美容とか恋愛とか。

——他にイベントで予定していることはありますか?

加奈子:今まで何をしてきたかや、今後のことも話したいです。あと、プレゼント抽選会やスペシャルフードメニューも出します!

——では、最後におふたりから来てくれる方へ向けて、ひとことお願いします。

Nukeme:質問が沢山くると嬉しいです。個人的には、質問はキツければキツいほど嬉しいです。そして最終的にはみんなに混乱して帰ってもらいたいです。

加奈子:私は解散から長く間が空いちゃったから、今回のイベントが決まったときは、みんな私のこと覚えていてくれてるのかな…? という不安があって。禁断の多数決のときも地味なほうだったし…。でも、禁断の多数決にいるときの私と一人の時の私は違うから、禁断の多数決にいたときにできなかったことを、これからどんどんやっていきたい。私のこれからをみんなに見てほしいです。

加奈子

2014年、禁断の多数決へ加入。ボーカルでパソコン音楽クラブなどへ楽曲参加や歌詞提供なども務める。2018年、第三期禁断の多数決解散、脱退。活動再開の第一弾として今回のトークイベントを開催。

Nukeme

ファッションデザイナー/アーティスト。

キャップに辺口芳典の散文詩を刺繍した「ヌケメ帽」、ミシンの作動データにグリッチを発生させ、崩れた企業ロゴなどを洋服に刺繍する「グリッチ刺繍」などを制作。最近は彫刻の制作も行っている。鍵っ子、シシヤマザキと3人で目隠ししたまま喋るKNS目隠しラジオをPodcastで配信中。

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