住民側「司法は逃げた」 広島・差し止め裁判 伊方原発

規制委審査 合理的か判断せず 

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会見で広島地裁の却下決定を批判する申立人や代理人弁護士=26日、広島市中区の広島弁護士会館

 対岸の原発に「待った」はかからなかった。広島地裁が26日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の稼働禁止を求めた広島市民らの仮処分申請を却下したことで、四国電は27日に運転を再開する。住民側は「司法は逃げた」「福島事故の過ちを全く反省していない」と憤った。大分県内で同機の差し止め裁判を続ける市民団体も「諦めずに闘いを続ける」と強調した。

 「火山ガイドや新規制基準の適合性審査が合理的かどうかを判断しなくていいと、正面から認めた決定は恐らく初めて。原発の稼働を許容する新たな逃げの論理だ」

 広島市内で開かれた26日の記者会見。住民側の甫守(ほもり)一樹弁護士は「明らかに間違っている」と批判した。

 藤沢孝彦裁判長は、争点となった阿蘇山の巨大噴火について「原発の運用期間中ではなく(並行して審理されている)訴訟の判決が確定するまでの間のリスクが問題になる」との見解を提示。「発生の可能性は低く、仮処分命令で直ちに除去しなければならないほどの危険はない」とした。

 原子力規制委員会の審査内規「火山影響評価ガイド」の要件を満たさなくても、直ちに人格権侵害とは言えないとも言及した。

 門前払いの決定に、申立人で被爆3世の会社員綱崎健太さん(38)=広島市=は「もしかしたら止め続けられるかもしれないと思ったが…。議論が尽くされないままの決定だ」と表情を曇らせた。

 9月には広島高裁に続き、大分地裁も「社会通念」を基準に運転を容認する判断を示している。

 「伊方原発をとめる大分裁判の会」の小坂正則事務局長(65)=大分市=は「司法が3・11の前に戻った気がする」。同会の弁護団共同代表を務める徳田靖之弁護士は「万一、事故が起こったらどうなるのか。裁判所も電力会社も真剣に考えていないのではないか。(裁判を)諦めずにとことんやっていく」と語った。

 伊方3号機は昨年10月に定期検査に入って以降、約1年ぶりの稼働となる。

 四国電の滝川重理登(えりと)原子力部副部長は26日、広島地裁前で取材に応じ、「緊張感を持って安全第一で取り組む」と話した。

愛媛住民ら 「町が活性化」「命守れ」

 「稼働で町は活性化する」「安全に暮らすのは私たちの権利」。四国電力が伊方原発3号機(愛媛県伊方町)を27日未明に再稼働させる方針を明らかにした26日、地元住民からは安堵(あんど)や期待の声が上がった。一方、東京電力福島第1原発事故から約7年半となる中、市民団体が事故の教訓を生かすよう訴え反発した。

 「稼働するに越したことはない」。伊方町で宿泊業を営む70代男性は再稼働を歓迎。ただ、町のにぎわいが徐々に失われているとして、「お客さんとして来てくれるのは原発関連の社員らがほとんど。観光目的で泊まってくれる人は全くいない。今後、廃業する同業者が出てくるかもしれない」と声を落とした。同町の自営業長生博行さん(51)は「原発事故が起きた際の不安を住民が抱えたまま再稼働するのは時期尚早だ」と批判した。

 この日は、脱原発を訴える香川県の市民団体のメンバーらが再稼働中止を求める署名を、四国電の佐伯勇人社長に宛てて同社本店(高松市)に提出。メンバーの高松市の会社員名出真一さんは「福島の事故を思い起こして。経済性で片の付く話ではない」と訴えた。午後6時半ごろ高松駅前に約100人が集まり、「原発廃止」などと書いたちょうちんやのぼりを掲げた。

 その後、小雨の降る中、「命を守れ」とシュプレヒコールを上げ、四国電本店前まで行進。参加した香川県三木町の農業溝渕裕子さん(46)は「何か起きたときに想定外と言われ責任逃れされるのが怖い」と心配そうに話した。