ギニアで奮闘 大村出身、日本大使館医務官 猪股さん 専門医わずか5人の国で、精神科の研修や診療支援

 大村市出身で長崎大医学部卒の精神科医、猪股晋作さん(37)は、アフリカ・ギニアの首都コナクリにある日本大使館の1等書記官兼医務官。2015年秋に赴任し、仕事の傍ら現地の医師に精神科医療を指導する研修を行い、診療を支援するなどのボランティアに取り組んでいる。世界で最も貧しい国の一つとされ、専門医が全土に5人しかいない中で精神科医療の普及を目指している。
 「人々がすごくフレンドリー。都会ではない分、道を歩いていても、みんなあいさつしてくれて人の関わり方が温かい」
 ギニアの印象を尋ねると、優しい表情で語った。「家はボロボロで道もデコボコ」という、現代の日本と懸け離れた環境での勤務は4年目を迎える。
 在外公館の医務官は現地職員や在留邦人の診療、感染症を中心とした現地の情報収集などが役割。佐賀県の病院に勤務していたが、初任地がアフリカとなる医務官の募集を知り「旅行で行けない国に行ってみたい」と応募、採用された。
 赴任当時、同国ではエボラ出血熱が流行。政府機関や病院を巡って調査しながら、首都の国立病院でも聴診器さえ不足している厳しい医療・衛生環境を知った。治療を祈とうや伝統療法に頼る傾向も強い。特に専門の精神科については、150万人以上と推定される精神疾患患者に対し、診察を受けられる病院は首都に1カ所だけという状況だった。
 こうした中、現地で知り合った同国保健省の精神科医らと連携し、17年2月から他分野の医師に精神科の診療を指導する研修を大使館で開始。同年末から新たに2カ所の病院で、研修を受けた医師による診療をスタートさせた。猪股さんや専門医が定期的に同席し、助言をしている。
 患者は統合失調症などに加え、大麻使用の後遺症に苦しむ人らもいる。「新規患者に加え、これまでの治療で治らなかったり、薬の副作用が出ている人が受診。適切な治療や投薬で改善する患者が多い」。ただ、定期的に薬を買えるお金のある人は少なく、日本で寄付金を募り薬代を補助する活動もしている。
 ほかに現地の空手教室で指導したり、仲間と海岸のごみ拾いをしたりと熱心。「学んできたことを多くの人のために役立てられるのはうれしい」とやりがいを語った。今月末、ギニアに戻る予定。「ちゃんとした日本食が食べられないのが悩み。帰国して豚カツを食べ過ぎて太りました」と笑顔を見せた。
 活動に関する問い合わせはNPO法人「ギニアこころのクリニックとおむすびの会」(メールアドレスkokomusu.guinee@gmail.com)。

◎ズーム/ギニア

 アフリカ大陸西端に位置する共和制国家。人口1240万人(2016年)、面積は日本の本州とほぼ同じ24万5857平方キロ。1958年にフランスから独立。公用語はフランス語。2014~15年、感染力が強く致死率が高いエボラ出血熱の大流行に見舞われ、約2500人が死亡した。

「学んできたことを人のために役立てられるのはうれしい」と語る猪股さん=長崎新聞社
コナクリ市内の病院で精神科の外来診療に付き添う猪股さん(左端)=今年2月、アフリカ・ギニア

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