『ヴェノム』 意表突く本格SFホラーの味わい

(C)&TM2018 MARVEL

 スパイダーマンのヴィラン(悪役)として知られるヴェノムを主人公にした異色のアメコミ・ヒーロー映画だ。コアなファンじゃなくても、『スパイダーマン3』で黒いスパイダーマンになってしまうのは彼の仕業、と言えば思い出す人も多いのでは? ただし、『スーサイド・スクワッド』がそうだったように、ハリウッド大作の主人公ともなると悪に徹するのは難しいようで、地球外生命体に寄生された男が人類の危機に立ち向かう話だ。

 監督は、『ゾンビランド』のルーベン・フライシャー。パロディーやオマージュが得意な鬼才だけに、冒頭のスペースシャトルのシーンから“どこかで見た”感が濃厚に漂う。こちらの意表を突く本格SFホラーの味わいで、イメージの誘導や世界観の構築力はさすがである。

 一方で、その既視感が少なくとも日本では悪い方に働いている面も。見どころの一つに、漫才の掛け合いのようなヴェノムの心の声との会話があるのだが、どうしても日本の『寄生獣』を思い出してしまうのだ。寄生=共存だけでなく、環境問題や人間を食料とするなど共通要素が多過ぎる上に、心の声より右手と会話する『寄生獣』の方がヒネリは利いているわけで、後出しジャンケンにもかかわらず多くの点で見劣りしてしまう。

 それでも、ハリウッドのVFX技術とヴェノムのユニークな造形を生かしたカーチェイスはかなり斬新。エンドロールのオマケも含め、アメコミ・ファンは見逃せないだろう。★★★☆☆(外山真也)

監督:ルーベン・フライシャー

出演:トム・ハーディ、ミシェル・ウィリアムズ

11月2日(金)から全国公開

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