「年に1度のごちそう」味わう 伝統の『がね汁』

西海・雪浦で教室

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 長崎県西海市大瀬戸町雪浦地区に伝わる郷土料理「がね汁」の作り方を学ぶ教室が27日、同町の川添酢造で開かれた。例年10月に催される熊野神社の大祭「雪浦くんち」に欠かせない料理だ。地元の人でも「年に1度」というごちそうを味わった。

 教室は地元のNPO法人「雪浦あんばんね」の主催。くんち初日のお下りの後、各家庭で開かれる「直会(なおらい)」という無礼講の宴会で振る舞う料理。直会を開く家庭は少なくなっているが、今でもがね汁を用意し、客をもてなす家もある。
 材料になるカニは地元では「ツガネ」と呼ばれている「モクズガニ」。川に生息する。郷土史家の林吉行さん(76)によると、1970年代以降、護岸整備が進み、大きなカニは減ったという。
 がね汁の作り方は、各家庭で異なる。この日は、数日前から井戸水に漬け、泥を吐かせておいたツガネを生きたまま棒でつぶした。みそを混ぜ、約30分間かけ、さらに細かくつぶした後、水を加えながらザルでろ過し、その汁を加熱した。
 講師を務めた川添成行さん(68)によると、カニに含まれるタンパク質と、みそに含まれる「にがり」の成分が混ざり合い、加熱されることで豆腐状の“ふわふわとした具”ができるという。“具”を崩さないよう、椀(わん)に盛るのがポイントだ。
 出来上がったがね汁は地元の農業、吉村源太郎さん(80)が丹精込めて作ったアイガモ農法の新米と一緒にいただいた。“具”の部分は例えるならカニの味が濃厚な寄せ豆腐といった味わい。汁は濁りなく澄んでおりカニのだしが濃い。「飲み疲れた体を休める一杯。シメにもなります」と川添さん。
 風味豊かながね汁だが調理には注意点も。長崎大名誉教授の青木克己さん(75)=寄生虫学=によると、川にすむカニには、肺ジストマ症の原因となる寄生虫が潜んでいるケースもあり生食には適さない。加熱と調理器具の衛生管理が必要だ。
 川添さんは「がね汁は、ゆでガニとは違い、ツガネを隅から隅まで使う。命を無駄にせずに、感謝をしていただく調理法」と話す。長崎市から参加した松本志久さん(69)は「米と、がね汁だけだが、手間のかかったもてなし料理。おなかも心も満たされた」と満足げだった。

「雪浦くんち」には欠かせない「がね汁」
「がね汁」の材料、ツガネ(モクズガニ)
棒でつぶしたツガネにみそを混ぜる=西海市、川添酢造