金属行人(10月30日付)

 ドイツにある世界遺産の古都ゴスラーに、1千年以上にわたって操業を続けたランメルスベルグ鉱山がある。1988年の閉山まで銅や錫、銀、鉛など多様な金属が採掘され、その麓に位置するゴスラーはドイツ皇帝の居城が置かれるほど繁栄した▼鉱山の名前は、ラメという騎士が狩りから戻ると馬が地面をかいていて金属が見つかったことから名付けられたとされてきたが、最近ではイタリア古語で銅を意味する「ラメ」からきたとする説が有力となっているらしい。本格的に採掘が始まったのは900年代とみられているが、紀元前にここで産出されたと考えられる青銅器も見つかっているという▼現在は博物館となり、坑道や鉱山設備、採掘に使われた器具、産出された金属を加工して作られた製品などを見学できる。その長い歴史の中で同鉱山から生まれた技術もある。鉱石を採掘場から水力で引き上げる際に用いる金属ワイヤーは同鉱山が発明したもので、現在でも世界中で使われている▼「Gluch・auf!」―同鉱山で作業員同士が掛け合った言葉だ。ドイツ語で直訳すると「幸運の上に」となるようだが、現代でいうところの「ご安全に!」と「景気が良くなるように!」という意味が込められている。

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