高大接続改革(8)大学も変わる シームレスな学びへ

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英語のディベートの授業で活発に意見を述べ合う岩田高APU・立命館コースの生徒たち=19日、大分市

生徒や学生も意識改革を

湯煙が立ち上る大分県別府市。立命館アジア太平洋大(APU)は、その市街地を望む高台に2000年、グローバル(地球規模)とローカル(地方重視)を合わせた「グローカル」を掲げて開学した。約6千人いる学生の半数は海外の留学生。さまざまな言語が飛び交う空間に、近年は高校生の姿が目立つようになった。

大分県で歴史のある私立高校、岩田高(大分市)に「APU・立命館コース」が創設されたのは08年度。世界で活躍できる人材育成を目指す双方の思惑が一致、系列・付属系ではない珍しい連携が実現した。

コースは1学年約30人で、卒業後は基本的にAPUか立命館大に進む。このため、生徒は大学進学の先を見据えた目標を立て、学校と大学は語学力に加えて必要な学力・スキルの育成を担う。コース主任の荒金正治教諭(53)は「教科書の知識などの基礎学力にプラスアルファで何を学ぶかだ」と話す。

生徒たちは、APUの学生や留学生のサポートを受け、世界各国が抱える諸問題の「調べ学習」やインドネシア語などの語学授業を受ける。3年時には週2日、APUに通い、大学生と一緒に講義を受講。取得単位は大学入学後に認定される。

英語には特に力を入れ、1、2年はネーティブの講師によるディベートの授業、3年は英語で卒業論文を書く。生徒の中には帰国子女もおり、海外からの留学生も在籍。日常的に英語に触れる環境が整う。

高校1年の教室をのぞくと、ディべートの授業が行われていた。「すべての日本の高校が制服を廃止するべきか」を議論。生徒たちは習得した英語力を駆使し、賛否の主張を繰り広げていた。野地綺子那(きずな)さん(16)は「プレゼンや英語の授業は将来に役立つ時間。大変だけど楽しい」と目を輝かせた。

荒金教諭は「大学に行ってからが大事。課題解決の過程を重視するなど、大学の講義やゼミに必要な力を育てることを考えてカリキュラムを作っている」と説明した。

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同コース出身のAPU4年、二宮未沙希さん(22)と同、西村ひかりさん(21)と会った。

4歳から英会話教室に通っていた二宮さんは将来、観光業に携わりたいと思い、APUを見据えて岩田高に入学。「高校の授業からグループワーク力やプレゼン力が身に付いた」と話す。大学では自然とリーダー役に。高校で興味を持った韓国語の勉強は今も続けており、希望通り航空会社系の企業に就職が決まった。

西村さんは岩田高を「滑り止め」のつもりで受験。国立大志望だったが、高校の授業に触れて考えを改めたという。3年時、大学生と一緒に講義を受け、高校生ながら成績は最上位。「自信になり、やりたいことが明確になった」と言う。

APUでは高校時代の単位取得で余裕ができた時間を使い、語学を勉強した。中国語を学ぶサークルに入り、英語のみの講義やゼミも率先して受講。夢がかない、来春から国際的な産業ガスメーカーに就職する。

高校から大学へのシームレス(継ぎ目のない)な学びを経て、未来への道を開く学生たち。APUの松井かおりキャリア・オフィス課長は、岩田高や付属高の出身者を「“自走”する力が既に身に付いている」と強調。高校で自ら考え、表現する力を養い、APUで多様性に触れることで就職先の評価も高いという。

課題もある。一般入試の学生との基礎学力差だ。APUコースなどの生徒たちは、学びの一貫性は得られるが大学受験はない。ぎりぎりまで勉強を続けて入学した学生に対し、二宮さんと西村さんは「劣等感を抱いた」と振り返る。

松井さんも「二極化しやすい」と現状を認めつつ、卒業後を見据えて個別のキャリア教育などギャップの解消に力を注ぐ。一方、近藤祐一入学部長は入学経緯にかかわらず「APU生にするための初年次教育がますます重要になる」と力を込めた。

日本型の終身雇用慣行が崩れ、グローバル化が進む中、かつての「大学が教育の到達点」という意識は薄れつつある。ただ、高校、大学が入試制度や学びの仕組みを変えていくだけでは改革の真のメリットは見えてこない。生徒や学生の意識をどう変えていくのか。その点が問われている。

=2018/10/28付 西日本新聞朝刊(教育面)=