【ブラジル大統領選】ジャイル・ボルソナーロ氏が当選|ブラジル大統領選の仕組みと経緯を解説!

10月28日、ブラジルで大統領選挙が行われました。その結果、「ブラジルのトランプ」などと称されるジャイル・ボルソナーロ氏が当選を果たしました。
この記事では、ブラジル大統領選の仕組みと今回の選挙の経緯について簡単に解説したいと思います。

ブラジル大統領選の仕組み

大統領選は大きく3段階に分かれます。まず、各党候補の決定です。各党は事前に候補者の調整を行いますが、その際多くの党の間で連合を組むことが画策されます。例えば、主要政党の1つである、ブラジル社会民主党は、9つの中小政党との連合を形成し、候補者としてブラジル社会民主党党首のアルキミン氏を擁立することに成功しました。このように、各党の候補者選出はエリート的に行われるといえます。
その後、1回目の投票が行われます。しかし、今回の選挙では、1回目の投票で過半数の票を獲得した候補はいませんでした。そのため、上位2名による決選投票が行われることとなりました。
そして、今回2回目の投票、決選投票が行われて、55%あまりの票を獲得したボルソナーロ氏が当選を果たしました。

経済の長期低迷と左派政党批判

それでは、なぜ「ブラジルのトランプ」と称されるボルソナーロ氏が当選を果たしたのでしょうか。理由は大きく3つあります。第一に、長期的な経済低迷による左派政党批判です。ブラジルでは長期的に経済が停滞しています。ブラジルは2015年ごろまで実質経済成長率は最悪-6%に達するなど、最悪の経済状態でした。その後最悪の経済状態からは抜け出すものの、2018年5月にはトラック運転手による大規模ストライキが発生するなど、経済成長はうまく軌道に乗っていません。このような経済状況の中、批判は当時の左派連立政権に向かい、2015年には汚職に対して百万人規模の、2016年には300万人規模のデモが起きました。こうした反発の結果、2016年、ルセフ大統領に対する弾劾が成立し、辞任を迫られました。

以上のように左派政党に対する批判が台頭する中、例外的にカリスマ的人気を博したのが任期満了によって2011年に退任したルラ元大統領でした。しかし、そのルラ氏も今回、汚職を理由として出馬を認められませんでした。そのため、左派には今回目玉となる候補はいませんでした。これが第二の理由です。

第三に、中道保守路線候補のアルキミン氏の不発です。経済低迷と汚職による批判が左派政党に集まった結果、保守政党が有利になりました。しかし、その中で王道とも言うべきアルキミン氏は、2017年末にブラジル社会民主党党首に就任して以降党の人気も低迷する中、大統領選候補としても支持を集められませんでした。その中、有力で清新な保守の選択肢としてボルソナーロ候補が台頭したのです。

ボルソナーロ候補の台頭

ボルソナーロ候補は、主に清新さと経済改革という点で支持を受けました。清新さという点では、ボルソナーロ氏は、今のところ汚職がないという点と政治家らしからぬ過激な発言で注目を集めることに成功しました。過激な発言という点では、独裁政治や政治改革としての内戦を支持し、難民や女性、同性愛者への批判を展開しました。

一方で、彼の主張する経済改革も支持獲得において大きな役割を果たしました。経済政策では市場重視を強調し、テメル現政権の経済改革路線を継承する姿勢を示しました。批判の集まる左派候補との差別化し、男性、高等教育を受けた層、中流階級以上の層において最も支持を集めることに成功しました。
その結果、ボルソナーロ氏は、アルキミン氏を擁立するブラジル社会民主党の支持者からもアルキミン氏に次ぐ支持を獲得するなど、保守系候補の看板となっていったのです。

このように、ボルソナーロ氏は、有力で清新な保守として支持を集めることに成功しました。しかし、ブラジルは左派政権批判の原因となった長期的な経済低迷に陥っており、その原因となるインフラ整備の不十分さなど根本的な問題が放置されています。その中で彼の政策がどこまで政治や経済の安定に資するかは不透明です。

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