<隠れた名盤> ASKA『We are the Fellows』 もがきつつも進みたいという想いに共感

ASKA『We are the Fellows』

 30年分のソロ作品の中からファン投票の上位13曲で構成されたベスト盤。近年の大容量ベスト盤と比べると割高に見えるが、それでも楽曲の高品質を考えれば、むしろこれくらいが正価かもしれない。当時知っていた曲も、奥行きのある音でより深く心に届く。

 大ヒット曲の『はじまりはいつも雨』や『晴天を誉めるなら夕暮れを待て』より上位に、深い友情を感じさせる『けれど空は青』や、心の葛藤を描いた『月が近づけば少しはましだろう』が選ばれているのが特徴的。ここ数年の彼の状況やファンの心境を考えるとより胸に響く。

 さらに、2017年のアルバムから3曲選ばれていることもポイント。都会の生活の中にも絆を感じさせる『東京』や、退廃的なロックの『と、いう話さ』を経て、バラードの『しゃぼん』で締めくくる曲順が秀逸。特に、「それでも それでも ああそれでも」とASKAらしい粘り気のあるシャウトで終わる部分に、もがきつつも進みたいという想いが漲っていて、いたく共感した。

 人気の13曲以外から自身が選曲し、新録音曲も追加した『Made in ASKA』も発売。決して下世話な表現を選ばずに奏でられる一連の作品を聴けば、近くにいる人の情緒にも気づけるはず。

(ヤマハミュージックコミュニケーションズ・3519円+税)=臼井孝

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