<大ヒット盤> 山内惠介『The BEST 18singles(オハコシングルス)』 折り目正しい初期から、格別のスター性見せる現在へ

山内惠介『The BEST 18singles(オハコシングルス)』

 “ぼくはエンカな高校生”から“演歌界の貴公子”へと成長した山内惠介の(企画作を除き)全シングル表題曲を集めたベスト盤。

 全18曲、最新曲『さらせ冬の嵐』からデビュー曲『霧情』に遡っていく曲順だが、初期の楽曲も折り目正しくて上手い。安定したビブラートやクリアな高音など、カラオケ採点機ではむしろ当時の方が高得点が出そうだ。

 その上で再び近年の楽曲を聴くと、やはり現在のスター性は格別だ。出だしの強い語気でグッとつかみ、サビ前の揺れる歌声で次の最高潮を予感させ、ラストで絶唱する様子は声質は異なれど往年の野口五郎を想起させる(それゆえ冬の歌もよく似合う)。特に、『さらせ~』と前年の『愛が信じられないなら』は、昭和歌謡を多数作・編曲した馬飼野俊一が担当しているので、演歌が苦手な人にもオススメ。彼は、一演歌歌手というより、歌謡曲をアップデートし続ける貴重な存在だろう。

 他にも、『神田川』時代を想起させる歌詞(作詞は、やはり神田川の喜多條忠)の『スポットライト』や、『星降る街角』並みに軽快な『恋する街角』など印象的。本作を聴けば、自分の中に潜む幅広い分野を理解するチカラに気づくはず。

(ビクター・3000円+税)=臼井孝

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