【変わるか!国内流通・加工業】ゲスタンプ、最新の熱間プレス加工技術が上陸 「次世代」への課題多い自動車、部品モジュール化加速も

 スペインを本拠とする自動車部品の世界大手、ゲスタンプの日本初の生産拠点、松阪工場(ゲスタンプ・ホットスタンピング・ジャパン社)の本格生産開始で、超ハイテン鋼による冷間プレス加工や、異鋼種の溶接接合法などが今後どのように推移するのかも注目点になってきた。「海外の自動車部品メーカーの日本への工場進出」という出来事が、鋼材流通・加工業の周辺にどのような変化をもたらすのか。「鉄」と「自動車」の関係はどう変わっていくのか。

 ゲスタンプ・オートモシオンは、世界22カ国で事業を展開しており、108の生産拠点を持ち、近くインドや中国、韓国にも拠点がある。OEMを対象にした自動車部品および金属アセンブリーの設計・開発・製造・販売を手掛ける。

 今回の日本進出は、新工場と事務所棟を新設し、ホットスタンプ加工ライン(1ライン)、レーザ加工ライン(4基)、品質検査室などを新たに設置したもの。

 国内の自動車メーカー向けにシャーシやホワイトボディー向けの部品を供給し、今後、需要が増えてくれば、加工ラインを増設する計画。

 先週、現地で行われた開所式には、本田技研工業やトヨタ自動車の開発者などが出席。自動車メーカーの関心も高い。

 今回の工場進出が注目されるのは、熱間プレス加工という国内ではこれからという技術もさることながら、日本の自動車産業の競争力の源泉であった「メーカーと部品メーカーが国内でともに技術を磨く」という図式とは異なり、マザーを海外に持つ世界屈指の自動車部品メーカーが日本に上陸したという点。

 軽量化、EV、コネクテッド、自動運転など、日本の自動車産業にとっての課題が極めて多い中で、系列外から部品を購入し全体のコストダウンにつなげる選択肢は十分にありうる。自動車部品のモジュール化を促進する契機ともなりうる。

 ボディー周りなどの自動車部品加工技術として、欧州ではポピュラーな熱間プレス加工。他社を凌駕するゲスタンプの加工技術が日本でも展開されることにより、超ハイテン鋼をはじめ、自動車に使用する鋼種も変化する可能性がある。

 事実、国内の部品メーカーでも熱間プレス加工ラインを新設・稼働しており、アルミめっき鋼板などの流通量も増えてきている。熱間プレス加工では通常、冷延鋼板などでは表面に酸化スケールが生成される。スケール除去による生産性低下を防ぐため、沸点が高いアルミ系の金属皮膜を施した鋼板が有用とされる。

 こうした流れが、コイルセンターなどの成長戦略にどう影響を与えるか。当面はもっとも組立工場が近いホンダ向けが主体となりそうだが、今後、自動車メーカーとゲスタンプの結びつきは強まっていくのかどうか。動向が注目される。

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