ホンダ 新型インサイト 最新情報│ホンダハイブリッドの象徴が4年ぶりに復活した理由

ホンダ 新型インサイト

新型インサイトとトヨタ プリウス、ライバル2車の決定的な違いとは

ホンダ 新型インサイト

VWのディーゼル不正を機に、欧州の自動車メーカーがこぞってEVシフトを表明している。フランスとイギリスは2040年以降ガソリン/ディーゼル車の販売を終結させる方針を固めたと発表するなど、「自動車が大きく変わる」と言う報道もよく目にする。

ホンダは2030年に、四輪車グローバル販売台数の2/3を電動化(電気自動車・プラグインハイブリッド・ハイブリッド等)することを目標にしている。すでに現時点でハイブリッドシステムだけでも車種/カテゴリーに合わせ3タイプを用意するなど、この辺りは、THSII一本打法のトヨタと違う技術オリエンテッドなホンダらしい部分でもある。

そんな中、ホンダのハイブリッドをけん引してきたインサイトが4年ぶりに復活を遂げた。

振り返ると1999年に登場した初代は「燃費世界ナンバー1(当時)」、2009年に登場した2代目は「みんなのハイブリッド」、そして3代目となる新型の開発コンセプトは「クルマとしての本質的な魅力を追及」である。ハイブリッドが普及し、燃費や環境性能に優れるのは当たり前となった世の中で、クルマとしての“原点”に戻った……と言うわけだ。ちなみに新型のポジショニングはシビックとアコードの間となる。

歴代インサイトの挑戦は「ホンダハイブリッドの挑戦」そのもの

このようにインサイトは世代ごとにネーミング以外は別のクルマ……と言っていいくらい異なる。世代交代でキャラクターをガラッと変えるのは、良くも悪くも「決して後ろは振り向かない」と言うホンダの得意技だが、いつもならネーミングも含めて刷新していたはず。なのに、インサイトの名が継承されているのはなぜか? その理由は「インサイト=ホンダのハイブリッドの挑戦」を意味しているためで、その時代のハイブリッドの“価値”に合わせて柔軟に変化しながら進化を行なう……という考えのためだ。この辺りは同じハイブリッド専用車ながらキープコンセプトを貫くトヨタ プリウスとは異なる。

新型インサイトとシビック、似ているようで異なる2台の大きな違いとは

ホンダ 新型インサイト グレード:EX│ボディカラー:ルナシルバー・メタリック
ホンダ 新型シビック セダン

▲写真左:新型インサイト / 写真右:シビックセダン

そんな新型インサイトだが、エクステリア(外観)上で新旧を比較すると、2代目インサイトが5ナンバーサイズの5ドアハッチバックだったのに対し、3代目の新型では3ナンバーのセダンへと大きく変貌した点が特徴だ。

プロポーションを見て気付かれた方も多いと思うが、新型インサイトはシビックセダンがベースとなる。ただしフロント/リア、そしてホイールなどに専用デザインが与えられ、差別化が図られた。スポーティかつアメリカの匂いが強い“味濃いめ”なシビックに対し、インサイトは若干薄味だがエレガントさと質の良さをアピールする。

ちなみにインサイトを特徴づけるクロームメッキのフロントグリルは日本向け独自の仕様で「刀身」をイメージ。ボディカラーはルナシルバー・メタリックをメインカラーに、シックな色を中心に計7色を用意する。

先進性とプレステージ性を大きく引き上げたインテリア

ホンダ 新型インサイト グレード:EX│ボディカラー:ルナシルバー・メタリック

インテリアもエクステリア同様にシビックがベースとなるが、リアルステッチのソフトパッドや、ハイブリッド車の特徴となりつつあるエレクトリックギアセレクターを採用した専用センターコンソール、7インチ高精細フルカラー液晶とアナログメーターを組み合わせた大径2眼メーターなどの専用アイテムの採用などによって、先進性とプレステージ性を大きく引き上げている。

ちなみにナビゲーションは、シビック/CR-Vでは現代のトレンドに全くそぐわない画面の小さなディーラーOP品のみの設定で興ざめしたが、インサイトは上級モデルを意識してか、専用の8インチ大画面ディスプレイ仕様が全グレードに標準装備される。

従来モデルでは荷室フロア下、アコードハイブリッドでは後席背面に搭載していたIPU(インテリジェント・パワー・ユニット:バッテリーや制御用ECU、バッテリー空冷ファン、高電圧遮断装置を一体化したユニット)だが、新型はIPUの小型化も相まって後席シート下に搭載した結果、ベースとなったシビック(=ガソリン車)と変わらないゆとりある室内空間と、広くフラットなトランクルーム、そして6:4分割可倒式リアシートを実現。ミニバンのような広大さはないものの、大人4人がくつろげる空間を実現している。

EV/シリーズハイブリッド/ガソリンエンジンと3つの走行モードを使い分け

ホンダ 新型インサイト グレード:EX│ボディカラー:ルナシルバー・メタリック

パワートレインはホンダのスポーツハイブリッドシリーズの中で最も評価の高い2モーターの「i-MMD」を採用。普段は日産のe-POWERと同じく発電機として発電した電力でモーターを駆動するシリーズハイブリッドだが、高速走行時ではエンジンでの直接走行も可能にする。つまり、走行条件によりある時はEV、ある時はシリーズ式ハイブリッド、ある時はガソリンエンジンとして走行が可能だ。

2013年にアコードハイブリッドに搭載されて以来、2016年には構造の合理化や大トルク対応によりオデッセイ/ステップワゴンなどミニバンにも展開されているが、新型インサイトは重希度元素を使わないネオジム磁石を使ったモーターやPCU(パワー・コントロール・ユニット:2つのモーターをコントロール)の小型化、最大熱効率40.5%を誇る1.5リッター アトキンソンサイクルエンジンとを組み合わせた進化版(エンジンが109ps/134Nm、走行用モーターは131ps/267Nm)だ。

ちなみに新型インサイトの基本的なシステム構成は、先に登場したクラリティPHEVと同じだが、バッテリーの搭載量だけでなく制御に関してもインサイトに合わせて最適化されている。2台の乗り味の違いも興味深いところだ。

気になる新型インサイトの燃費だが、JC08モードで31.4~34.2km/L、WLTCモードで25.6~28.4km/Lとなっている。

走りの味付けから比較する新型インサイトとシビックの違い

ホンダ 新型インサイト グレード:EX│ボディカラー:ルナシルバー・メタリック
ホンダ 新型シビック セダン

▲写真左:新型インサイト / 写真右:シビックセダン

シャシー系はDセグメントも見据え、軽量・高剛性・低重心・低慣性をコンセプトに開発されたシビック譲りのグローバルプラットフォームを採用。

基本性能の高さはすでにシビックで証明済みだが、走りの味つけはインサイト独自に最適化。スポーティなキャラクターのシビックに対し、インサイトは上級モデルにふさわしいプレステージ性を高めるセットアップが行なわれ、2台の棲み分けはシッカリと行なわれているようだ。

また、パワートレイン系ノイズやロードノイズ、振動の低減のために吸音材や遮音材をはじめとする様々なアイテムの採用や加速時エンジン回転数最適制御/登降坂時エンジン回転数制御なども相まって、クラストップレベルはもちろん、一クラス上のセグメントモデルにも迫る静粛性を実現している。

ホンダの先進安全装備「ホンダセンシング」を全車に標準装備

安全に関しても抜かりはなく、世界基準の衝突安全性能に加えて、ミリ波レーダーと単眼カメラを用いて、衝突軽減ブレーキをはじめとする10の運転支援機能を備える「ホンダセンシング」を全車に標準装備。

気になる価格は326万1600円(LX)から362万2880円(EXブラックスタイル)。ベースモデルで比較するとシビックセダン+約50万円高の設定だ。ハイブリッドシステムの追加や細部の上級化を考えると想定内と言える範囲だと思うが、販売現場では従来のインサイトとはコンセプトや立ち位置が異なっている事を今まで以上にシッカリと伝えていく必要があるだろう。

インサイトの意味「洞察、眼識」通りに仕上がっている新型モデル

ホンダ 新型インサイト

今回の刷新に色々モノ申したい人もいるようだが、筆者は2代目インサイトの上級版として途中追加された「インサイト・エクスクルーシブ」の後継、インサイトの名に引っ張られなければシビックの上級モデルとして登場した「コンチェルト」、「ドマーニ」、更にホンダと共同開発された「ローバー400シリーズ」の生まれ変わりだと思えば、比較的すんなり受け入れられるのでは?と思っている。

インサイトの意味は洞察(=物事の本質を見通すこと)、眼識(=物事のよしあしや真偽などを見分ける能力)だが、新型はそんなクルマに仕上がっていると言えるだろう。

[筆者:山本 シンヤ 撮影:小林岳夫・和田清志]

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