広島叡智学園の教員住居が不足 大崎下島に来年開校

©株式会社中国新聞社

 来年4月に全寮制の中高一貫校「県立広島叡智(えいち)学園」が開校する広島県の大崎上島で、着任する教職員が住まいを見つけられない懸念が広がっている。島には不動産業者もおらず、唯一の民間アパートは満杯。賃貸物件がほぼ見当たらないのに教職員向け宿舎が建設される予定がないからだ。教職員が島外から通うことになれば「災害などで島に渡れない時に全寮制の子どもたちをどう守るのか」と心配する声も広がる。

 広島県教委によると、叡智学園の教職員は来春の開校時には約30人を見込む。中学1年から高校3年までがそろう2024年までに段階的に増え、最終的には約60人になるという。

 だが、約7600人が住む島には不動産業者はおらず、移住を希望する人は大半が大崎上島町役場に相談し、空き家バンクなどから物件を探すのが一般的だ。ただ、バンクに登録されている賃貸物件は周囲約60キロの島に現在わずか4件。老朽化もしており、傷みも目立つ。改修すればそれなりに費用もかかる。

 民間の賃貸アパートも島には1件だけ。島内の広島商船高専生や会社員で全28室がほぼ埋まっている。叡智学園の開校を当て込んで新しいアパートを建てる動きもまったくないという。

 叡智学園に島外から通うには、竹原港か東広島市の安芸津港から片道30分以上かけてフェリーで移動。さらに各港から島西端の学校まで行く必要がある。島内の路線バスは1時間1本程度で通勤に使うのは難しく、自家用車で島外から通えば普通車で5千円ほどの往復の船賃が必要になる。

 ところが、叡智学園は、学生寮は建設するが教職員住宅は整備しない方針。県教委は「生徒の安全管理を考えると島内の居住が良い」とする一方で「住宅は島外も含めて各自で用意してもらう」としている。

 学生寮の管理棟には宿直の教員2人と非常勤の寄宿舎職員1人ずつが交代で泊まり込む見通し。だが、大規模災害などでフェリーが欠航すれば、島内は宿直の教職員だけで子どもたちを守らねばならない事態になりかねない。

 島内にある県立大崎海星高は教職員16人のうち4人が島の県公舎に入居。同じく国立の広島商船高専は教職員宿舎に24人が住む。フェリーで島外から通勤している教員もいるが、生徒の家族が島にいるケースも多いうえ、教職員も島に多くが住んでいる。叡智学園は全寮制で生徒は家族と離れて住むため、非常時の対応はなおさら多くの教職員が必要になると想定される。

 島で唯一のアパート所有者の男性は「うちはほぼ満室で島内には他に物件はない。叡智学園の先生がどこに住むことになるのか、ずっと気になっている」と心配している。

 離島教育に詳しい大阪教育大の寺嶋浩介准教授は「教職員に業務外の負担をどこまで負わせるのかという別の問題はあるが、離島では教職員宿舎を学校の設置主体が用意するのが一般的だ」と話している。