対馬の「いなサバ」売り込め 東京のシェフと意見交換

 長崎県対馬市上県(かみあがた)町伊奈(いな)地区で取れるブランド魚「いなサバ」を水揚げしている漁業者団体「伊奈漁業集落」(丸島勲代表)は10月31日、いなサバのブランド価値を高めようと、東京からイタリア料理シェフを招いた意見交換会を開いた。シェフは熟成したサバを使った料理などを漁業者に振る舞い、漁場で下処理すると輸送時間がかかってもおいしく、付加価値が高いと助言した。

 伊奈漁業集落によると、いなサバは伊奈から数キロ沖で一本釣りされるマサバ。8月下旬~11月上旬は特に脂がのり、1キロ3500円程度で取引されることもあるという。

 シェフは東京・渋谷区にある高級イタリア料理店「ALMA」の佐藤正光料理長(30)。いなサバを1週間ほど低温保存し、アミノ酸が増してうま味を引き出した「熟成サバのヴァポーレ(蒸し煮)」などを提供している。

 意見交換会は同町の志多留地区多目的集会施設であり、佐藤料理長は熟成サバを酢でしめ、洋なしビネガーやオリーブオイルとあえたカルパッチョなど7品を提供。「東京まで輸送に2日かかるものの、船上で血抜きしたサバは臭みがない」と説明した。漁業者たちは熟成サバを初めて口にし「サバの生き腐れという言葉があるが、処理によっては時間がたったものもこんなにおいしいのか」と驚きの声を上げた。

 丸島代表(63)は「漁業者が高齢化している中、量よりも質を上げていくことが重要。下処理の徹底を呼び掛けていきたい」と話した。

佐藤シェフがいなサバで作った「いぶしたサバと発酵アカキャベツ タレッジョソース」 
伊奈地区の漁師と意見交換する佐藤シェフ(写真右中央)=志多留地区多目的集会施設

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