秋の褒章、新日鉄住金・江藤氏ら黄綬

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 政府は2日付で秋の褒章受章者を発表した。発令は3日。本紙関係では、新日鉄住金の江藤浩二氏らが、長年一つの仕事に打ち込んだ卓越技能者に贈られる黄綬褒章を受章する。

 秋の褒章の本紙関係の受章者は次の通り。

 【藍綬褒章】

 ▽神谷篤氏(61歳、愛知県鍍金工業組合理事長)

 【黄綬褒章】

 ▽横山英雄氏(73歳、横山サッシ工業会長)=金属製品製造業▽飯島勉氏(61歳、全国鉄筋工事業協会常務理事、飯島鉄筋工業社長)▽江藤浩二氏(63歳、新日鉄住金大分製鉄所製鋼部炉材技術室炉材整備課)=煉瓦積工▽谷口辰也氏(61歳、新日鉄住金鋼管事業部尼崎製造所設備部保全室)=熱間圧延工▽安田博文氏(58歳、新日鉄住金鹿島製鉄所製鋼部第一製鋼工場精錬課長)=製鋼工▽山本明夫氏(62歳、新日鉄住金君津製鉄所設備部中央整備室専任指導員)=機械修理工▽和栗輝美氏(65歳、新日鉄住金直江津製造所製造部形鋼・薄板工場安全衛生指導者)=熱間圧延工

本紙関係受章者

江藤浩二氏/新日鉄住金大分

 「キンキンキン…。ポンポンポン…」。五感を研ぎ澄まし、点検ハンマーでコツコツ叩く打音検査を駆使。耐火物の損傷状況を見極めるエキスパート。

 大分製鉄所は大型加熱炉をはじめ、50を超える多数の窯炉設備を有している。40年以上にわたって各窯炉設備の耐火物の点検・保全作業に従事。耐火物のお医者さん的役割を担っている。

新日鉄住金大分・江藤浩二氏

 卓越した知識と豊富な経験で、耐火物の損傷部位や損傷状態を的確に把握。適切な時期に適切な工法で補修することで安定高生産の実現に寄与。設備の長寿命化及び安定稼働に貢献してきた。

 現場現物主義。診断技能のヒントは全て現場から学んだという。63歳になった今は、若手への技能伝承に取り組んでいるが、「常に、何かいい方法はないかを模索している」。

谷口辰也氏/新日鉄住金尼崎

 勤続42年。尼崎製造所で一貫して熱間押し抜き製管法によるエネルギー産業向け大径シームレス鋼管の生産に携わった。昨年には「現代の名工」にも選出。多くのアイデアや作業改善によって生産効率の向上やコスト低減、品質改善に貢献してきたことが認められた。

 学生時代には絵や釣りが趣味だったが、「働き始めてからは、あまりできなかった」と、一心不乱に仕事に打ち込み、多くの功績を成し遂げた。

新日鉄住金尼崎・谷口辰也氏

 「諸先輩、上司、同僚に改めて御礼を申し上げたい」と受章の喜び。長く生産業務に従事した経験から「あすは予定にない仕事がくることもある。きょうやれることをあすに持ち越さない」を信条とする。

 後輩の育成にも注力。部署が変わった今も「何かあれば、いつでも電話してくれるように伝えている」。

安田博文氏/新日鉄住金鹿島

 精錬工一筋44年。高級鋼製造に欠かせない二次精錬工程で幾多の改善を成し遂げてきた功績が認められた。

 二次精錬は転炉で製造された溶鋼中の不純物をさらに低減する工程。ばらつきの少ない高純度の溶鋼をつくるため、溶鋼や設備の状態を見極め、成分や温度を要求通りにぴたりと収める精緻な精錬作業が安田氏の卓越技能だ。

新日鉄住金鹿島・安田博文氏

 功績の一つが極低硫鋼の量産法の発明。転炉から取鍋に溶鋼を注ぐ際の攪拌力を脱硫反応に応用し精錬効率を高めた。

 「数々の失敗も味わったが、失敗や苦労のおかげで仲間に恵まれ、多くの改善につながった」と安田氏。受章を機に今まで受け継いだ技術・技能を次の世代につなぐと改めて誓う。

山本明夫氏/新日鉄住金君津

 1975年に新日鉄住金・君津製鉄所に入社し、巨大な機械設備を修理する「重量鳶」の道を40年余りにわたり歩み続けてきた。

 製鉄機械の修理では高所や狭隘な場所から数十トンもの部品を運び出す場合が少なくない。生産再開までの時間とも戦いながら安全かつ正確に作業をこなす高度な技が必要だ。

新日鉄住金君津・山本明夫氏

 山本氏は定期修理はもちろん、突発的な要請にも対応。例えば場所の制約からクレーンを使えなくとも、ウィンチやワイヤなどを組み合わせた滑車装置を仮設し故障部品を運び出す。「正解はないのがこの世界」。君津のあらゆる工場を支えてきた卓越技能だ。

 「先輩から受け継いだものをしっかりつなぐ」と山本氏。後進には安全と挑戦心の大切さを説き続けている。

和栗輝美氏/新日鉄住金直江津

 新日鉄住金直江津製造所の形鋼・薄板工場で安全衛生指導者として安全に尽力してきた。

 今回の受章で「多くの先輩、上司、同僚の長年にわたるご支援の賜物であり、皆さんには本当に感謝申し上げます」と喜びを語る。入社以来一貫してステンレス・チタン厚板圧延一筋で取り組んできた。

新日鉄住金直江津・和栗輝美氏

 高度経済成長期に新設備の立ち上げを経験。多くの先輩から圧延技術、技能の指導を受け、ボロン含有ステンレス鋼板、銅箔製造ドラム用チタン鋼板、液晶パネル製造用モリブデン等新規開発品の試作・製品化を支えた。

 「今後は自らも精進するとともに、さらに技術・技能の伝承に努めていきたい。社内だけでなく、地元の小中高校生にモノ作りの素晴らしさを伝えるべく、若者たちへの伝承を進めたい」と話す。