金属行人(11月2日付)

 「普通ならとっくに下がっているはずなのに…」―最近の鉄スクラップ市況についてこんな声をよく聞いた。主力輸出先である韓国の買いが鈍いにもかかわらず、日本の鉄スクラップ市況が高止まりしていたためだ。従来の公式は『輸出が減れば、発生余剰の日本の市況は下がる』。この公式通りではない状況に関係者は頭をひねった▼考えられる理由は二つある。一つが国内需要の堅調。もう一つが市中発生の低調だ。確かに電炉メーカーの生産は堅調だが、それだけで市況が高止まりするとは思えない。やはり、今年末での中国の雑品輸入禁止を控え、H3以下など低級スクラップの流通量自体が減っている影響が大きいと感じる▼日本の鉄スクラップ価格が高いという事情もあるが、雑品混入など日本産スクラップの品質問題も韓国やベトナムが買いを手控える理由に挙がる。韓国・現代製鉄が新断など高級品は個別交渉で買いながら、H2は3カ月近く積極的に買わないことも、その一端だろう▼これまで高止まりしていた国内市況だが、東京製鉄が先月31日から買値を引き下げるなど高値修正の動きは強まっている。雑品問題という要素が加わり、従来ほど単純な公式ではなくなったとしても、輸出が減れば市況が下がるのは「時間の問題」ということではないか。

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