三菱 エクリプス クロスの魅力を2人の人気モータージャーナリストが語る
2018年3月にデビューを果たした三菱のコンパクトSUV“エクリプス クロス”が好調な売れ行きだ。また、2018年度グッドデザイン賞を受賞するなど、既に国内外のプロフェッショナルからの評価も高い。
デビューから半年以上を過ぎてもなお注目を集め続ける“エクリプス クロス”、その魅力について、モータージャーナリストの今井 優杏さんと嶋田 智之さんが徹底評価した!
「コンセプト・デザイン」「使い勝手」「ドライブフィール」そして「総評」と4項目のテーマごとに、三菱 エクリプス クロスのすべてについて存分に語って頂こう。
まず前編では今井優杏さんにご登場願った。彼女ならではの語り口で、鋭く評価していく!
【徹底分析 その1】 ~コンセプト、そしてデザインを評価する~
まず三菱 エクリプス クロスとは、どういうクルマなのだろう。
国内外のライバルSUVモデルもひしめくなか、三菱がこのクルマで狙うところとは。そしてそのコンセプトを具体的にかたちとして示したデザインについてプロが評価する。
今井 優杏はこう感じた~コンセプト・デザイン編~
なにより印象深いのはリアの2枚窓
世界中で大ブレイク中のSUVセグメントの中でも、話題の中心はよりコンパクトなタイプに移行中。競合の登場は引きも切らず、今年になってもまだ“最後発”なんて言葉が聞かれるくらいだ。おのずと製品競争も激しく、高級&高品質なモデルが魅力的な価格でどんどんリリースされているという、ユーザーにとっては実に嬉しくも悩ましい状況が続いている。
そんな超難関マーケットに三菱がぶっ込んで来たのは、スタイリッシュな“エクリプス クロス”!
キュッと締まった、これまでの三菱とはひと味もふた味も違うルックスは、なんと日米でグッドデザイン賞を受賞したというからお墨付きだ。確かに、SUVとしてはコンパクトなボディの中には、三菱らしい“走り”を連想させるデザイン手法が入って、特にサイドビューには疾走感すら感じるほど。
だけど、なんといっても特徴的なのはリアビューの“2枚窓”だと思う。
開発担当の方に聞いたところ、これはデザインと機能を両立させるために考案した、ハイブリッド・アイディアなんだとか。
個性と機能を両立させたデザインに納得
実は当初、デザインスケッチはもっと、クーペライクなルーフラインに描かれていたんだそう。しかし、それだと三菱の厳密なる製品基準に、主に後方視界確保の観点から適合しない。でもデザインも妥協したくないし……。
で思いついたのがリアウインドウを上下2枚に分ける方法。これだと確かに、運転席からの後方視界を犠牲にしていない!
外から見たら、真ん中に通った一本のラインが一見邪魔なように思えるけど、使用感は良好なのだからビックリ。
社内的にも、ありきたりなクーペルーフタイプにするよりも個性的になったと大好評なんだとか。
確かに、数あるコンパクトSUVの中にあって、こんなの見たことない! 高速道路でオーバーテイクされたら、思わず見送ってしまいそうで、バックシャンとはまさにこのことかも!
【徹底分析 その2】 ~SUVで最も気になる使い勝手を評価する~
年々人気が高まっていて、その勢いはとどまることを知らないSUVカテゴリ。さてSUVというその言葉の語源はアメリカ発祥で「Sport Utility Vehicle」(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の略である。直訳すると「スポーツ用多目的車」となるのだろうが、ともあれまず第一に“Utility”(多用途性・実用性)が重視されるクルマなのは間違いないところだ。
本項では“エクリプス クロス”の使い勝手について、じっくりと語って頂いた。
今井 優杏はこう感じた~使い勝手編~
ゴルフにスキーにキャンプ…アクティブな生活にジャストフィットな1台
都心部に住んでいて、たま〜にアウトドア(スキーとかキャンプとか!)に出かけたい。私を含め、そんな生活スタイルを送っている人にはまさにジャストフィットなポイントがサイズ感。
ドライビングポジションはヒップ&アイポイントが高く取られていて、一般道はもちろんのこと、高速道路でも見通し抜群、ノーストレスなのが嬉しい。
もちろん、先述のとおり後方視界も◎!
荷室の使い勝手もとても良さそう! 試乗ではたいした荷物は積まなかったけど、日常的にゴルフに出かけている私、ゴルフバッグが楽に詰めるかどうかをチェックするのは至上命題です。ちゃんと見ておきました。
結論、私のレディースサイズのバッグなら、十分に横置き出来そうだし、また、開口部と床面がフラットに設計されているから、ズルズル引きずりながら荷物を入れたり、また降ろしたりすることも可能。
この開口部の使いやすさは、出張時のトロリーバッグやスーツケース、そしてスキーなんかのギアにも同じことが言えそう。
スマートフォンとの接続を前提に設計されたディスプレイオーディオ
インテリアはシンプルかつ使用感も直感的にわかりやすく、カップルや夫婦間で一台をシェアしても、操作に混乱がなさそう。
実はオプションではちゃんと車載ナビも用意はされているんだけど、標準装備となるインターフェイスには、オーナーが各自のスマートフォンを接続してアプリを使用するApple CarplayとAndroid Autoに対応したものになっている。
先日のアップデートで、最新OSからはiPhoneでもGoogle Mapアプリを使えるようになったから使い勝手が大幅に向上!
私自身も普段、完全にGoogle Mapに依存した生活を送っているから、これに関してのネガティブはナシ。スマートフォンなどと親和性の高い若年世代なら、これで十分だと思う。
というわけで、使用シーンは無限大。日常からレジャーまでソツなくこなす守備範囲の広さです。
【徹底分析 その3】 ~三菱ならではのドライブフィール~
前項では“Utility”(多用途性・実用性)について語って頂いたが、続いては「走り」の面について分析して頂こう。
今さら語るまでもなく、世界ラリー選手権など幾多のモータースポーツで鍛え上げられた三菱自慢の車両運動統合制御システム「S-AWC」を伝承する“エクリプス クロス”。どのような進化を遂げ、僕らにどういった走りを見せてくれるのだろうか。気になるドライブフィールについて評価する。
今井 優杏はこう感じた~ドライブフィール編~
モデル毎に最適な4輪駆動システムを使い分ける三菱らしいこだわり
発売から何度もこの“エクリプス クロス”に試乗を重ねている私。
一般道はもちろんのこと、高速道路もワインディングも、結構な距離を共にしている。
で、このまえとうとう、オフロードにまでこの子を持ち込んでみました(笑)。だって三菱といえばラリーでしょ。ダカールでしょ。道なき道を往く、そのロマンが原動力でしょ!(力説)
そう、確かにそのイメージは正しいのだ。
三菱は過去の参戦やテストなど、歴史の中で積み重ねてきたデータを元に開発した四輪運動制御技術の開発思想である「AWC」(オールホイール・コントロール)というものを持っている。
これの凄いところは、何種類もの異なる四輪駆動技術を擁しているということ。つまり、たとえばパジェロにはコレ、アウトランダーPHVにはコレ、そして“エクリプス クロス”にはコレ、というように、同社の様々なモデル(パワートレーン)、そしてそのクルマが走行するであろうシチュエーションに応じた四駆システムがいくつも存在するんである。で、その中でもより高度な技術を持つ車両運動統合制御システムを「S-AWC」(スーパー・オールホイール・コントロール)って呼んでるってわけ。
今、グローバルで部品点数を減らして統合化する“モジュラー化”が各メーカー内で進むなか、わざわざそのクルマごとに四輪駆動技術を用意して使い分けるなんて、職人気質というかこだわりというか頑固一徹というか、とにかくスゴイ。
見た目こんなにシティ派なのに、中身は無骨で頼りがいある昔気質の性能が搭載されているなんて、もう、人間だったら恥も外聞もなくプロポーズしちゃってるかもしれない(しーん)。
オフロード走行で見えてきた、エクリプス クロスの本質とは
で、肝心のオフロード性能だけど、今回は未舗装の土路面にチャレンジしてみた。
走行モードは「オート」「スノー」、そして今回みたいな路面にバッチリマッチングの「グラベル」。元ラリーストとして、このネーミングにすらいちいち萌えてしまう私だが、ぐっとこらえてテスト。ハンドリングはどうか。
「ノーマル」は完全にアンダーコントロール。ぬかるんだ泥道もまるで何事もなかったかのようにしれっと走破。ドライバーは汗一つかかずハードなスリップ道を難なく駆けてしまう。
「スノー」は、後輪でもしっかり地面を蹴って、バランス良く四駆の力を使うことで、滑りやすい日本のシャーベット路面をも攻略する制御がなされている。
今回の土路面ではところどころ前日の雨によってかなりの低いμとなったところもあったのだけど、これまた涼しい顔で走破。滑り感なんてひとつも感じなかったのがスゴイ。
そして「グラベル」。四輪それぞれがしっかりと作用し、路面を正しく判断して掴む安全モードなのにもかかわらず、感激したのは程よい“遊ばせ感”が残されていること!
この辺、ほんとにクルマ好きな人が作ってるんだろうな~なんて、思わせてくれるポイントだった。
【徹底分析 その4】~総評 “エクリプス クロス”はここがいい!~
さて、コンセプトとデザイン、使い勝手、ドライブフィールとご紹介してきた“エクリプス クロス”の魅力・徹底分析。最後は今井 優杏さんに“エクリプス クロス”の総評、「ここがいい」についてじっくりと語って頂こう。
今井 優杏はこう感じた~総評~
心地良い“目立ち度”がウレシイ
試乗中、ず~っと感じた周囲からの視線。そう、とにかくこのクルマ「見られ度」が半端ないんです!
これってきっと、既視感のないデザインの賜物。
とかく競合が多いこのセグメントにおいて、個性をアピールできるというのは嬉しいポイントだと思う。だって、向こう三軒両隣、車庫にズラ~リおなじクルマって、なんか気まずくないですか?(笑)
“エクリプス クロス”は、この“目立ち度”が尖りすぎていなくて、街から浮きすぎないという点もポイント。あんまり派手すぎてもなぁ、でも丸かぶりするのもヤダ、なんていう日本人心理を、上手に満足させてくれる仕上がりになっている。
そうそう、心置きなく目立ちたいって人は、ぜひ同社おすすめの赤、その名も「レッド・ダイアモンド」を選んで!深みのある輝きはクリアな透明感もあってすごく素敵だから!
確かな走行性能に“三菱らしさ”
そして、なによりもの推しポイントは、実は確かな走行性能にある。本当に、乗り出してすぐに「あれ?こんなにカッチリしてるの?」なんて驚くこと請け合いなのだもの。
オフロードの走行性能についてはすでにお話ししたとおりだけど、そんな非日常でなくとも、このクルマのよさは使うほどにジワジワと実感するはず。
遊びの少ない、的確な操舵ができる重厚なステアフィールは、どっしりしていて直進安定性に優れているのに、駐車場で持て余すほどの重さは備えていない。“エクリプス クロス”用の車両運動統合制御システム「S-AWC」もさすがの仕上がりで、コーナリングはターンインから出口まで全域でオン・ザ・レール感、トレース感を堪能することもできる。
さらに、いつもながら三菱車はブレーキの質感がとっても良い!
踏み始めの効きも、それから奥の方でも、きっちりサーボがまんべんなく働いて、これはきっと同乗の家族にも感謝される点になるんではないでしょうか。カックンブレーキってほら、三半規管が敏感な子どもたちが酔っちゃうでしょう?
何度も言うけど、こういった“クルマとしての基礎体力の高さ”が網羅されていて、なんとも味わい深い乗り味なんです。ずば抜けて低燃費というワケでもないけど、これをもっと改善したいなら、高速道路では是非アダプティブクルーズコントロール(ACC)を試してしてみて!
[Text:今井 優杏/Photo:小林 岳夫]