【平成の長崎】2,000年問題 不測の事態に備えよう! 平成11(1999)年

 西暦2,000年まで、あと1カ月。コンピューターが誤作動を起こす恐れがある「2,000年問題」に備え、長崎県内の自治体や企業などは、対応策の総仕上げ段階に入っている。関係者からは「日常生活に深刻な影響を与えるような大きな混乱はない」と冷静な声の一方で「だれもが経験したことのない問題。外的な発生要因はつかめない」と不測の事態を懸念する声も。”ハイテク危機”に対する各機関の態勢などを探った。

◎行政

 長崎県は12月29日から1月4日までの7日間、対策本部を設置。計約70人の職員が待機し、県民からの相談に応じる。県内七79市町村は、不測の事態が発生した場合、県の対策本部に報告する。
 医療機関は、177の病院が、患者の健康や生命にかかわる心臓ペースメーカーや人工呼吸器など優先医療器具29種類のプログラム修正作業を完了(県健康政策課調べ)。万が一、電気、ガスなどが止まった場合、手動式医療器具や自家発電装置などを活用する。

◎警察・消防

 長崎県警は今年10月に同問題の対策本部を設置し、現在、人員態勢を練っている。交通管制システムや道路信号機の万が一の誤作動に備え、長崎、大浦署などでは署員の手信号による交通整理の練習も実施した。
 消防機関は、これまでにすべての対応作業や模擬訓練を終了。火災や救急搬送などをめぐるトラブルに万全の態勢で臨む。

◎エネルギー

 九州電力は、2,000年問題に1,996年から取り組み開始。電力の安定供給にかかわる「制御系システム」のうち、電力供給を直接、制御しているシステムは「日付情報を使用していないため、停電など電力供給の支障が生じる恐れはない」としている。大みそかから元日にかけて、県内の支店や営業所などで例年に比べ80人を増員、松浦発電所など県内3カ所の発電所でも50人増員する。
 西部ガスは「都市ガスの製造を直接、制御するシステムは日付情報を使用していないため、問題がないことを確認済み。ガスの供給中断などの支障が生じる恐れはない」。大みそかから元日にかけて、県内の支店や工場は例年より計約50人を増員する。

◎情報通信

 NTT西日本長崎支店は大みそかの夜から1月2日夕まで、ローテーション方式の二十四時間勤務態勢。3―7日はシステムエンジニア二人が支店に詰める。社員は携帯電話などで連絡が取れる状態で待機する。
 携帯電話会社のNTTドコモ九州は「通話に関しては特に問題が生じる恐れはない」。

◎運輸

 JR九州は今年9月末までにすべてのコンピューターシステムの修正を完了。11月24日には、2,000年問題を想定した全社的な総合訓練を実施した。大みそかから元日にかけて、対策本部を福岡本社に設置。例年の2倍強の1100人の人員態勢。社員は、列車運行の信号設備や自動券売機などへの配置が主。
 日本交通公社(JTB)長崎支店は、元日に管理職5人が支店内のコンピューターをチェック、4日からの営業に備える。
 運輸省長崎空港事務所は大みそかから元日にかけて緊急対策本部を設置。緊急連絡態勢を敷く。国際便は、ソウル発の大韓航空機が元日午前11時すぎに到着予定だが、元日午前零時をまたいで飛行する離発着便はないという。

◎金融

 県内4行(十八、親和、九州、長崎)は、主要取引先企業(4行計550社)との接続テストも11月中にほぼ終了。年末にかけては各行とも現金を通常より多めに確保。ATM(現金自動預払機)などの機器がストップした場合は、行員らが手作業で預金の支払いに当たる。
 大みそかから1月4日の間は、各行とも全支店で特別出勤態勢。年明け後に順次、オンラインシステム、勘定系システムの起動確認や、事務、設備関連機器の稼働状況をチェックする。

◎流通

 浜屋百貨店(長崎市)は元日(休業)、POS(販売時点情報管理)のレジスターや館内エレベーター、館内マイク放送設備の起動確認をする。
 大手スーパーのダイエーは元日が初売り。大みそかの営業と初売りの準備が終了後、各店の管理職2―3人が午前零時すぎまで待機。レジスターの起動などの異常の有無を確認する。

◎メーカー

 三菱電機長崎丸尾工場(長崎市)は年末年始(12月29日―1月5日)は休業。同期間中、工場内に総合対策室を設け、発電プラントや工業用制御装置の納入先であるユーザーからの問い合わせなどに対応する。
 三菱重工長崎造船所(同)も29―5日は休業。新年の仕事始め前の4―5日に、電算システムなどを確認する。

◎OA機器

 地場OA機器ディーラーのイシマル(長崎市)は年末年始期間中、システムエンジニアを交代で配置しユーザー対応に当たる。
 富士通長崎支店(同)は「自社のユーザーに関しては年末年始のコンピューターの使用状況を把握しており、何らかの事態が起きた場合でもスムーズに連絡が取れる態勢」。

◎マスコミ

 地元民放は大みそかから元日にかけて「不測の事態に備え、各職場ごとの人員態勢を検討中」(NBC)、「役員と報道制作局員全員が出社」(NCC)―など態勢を整える。
 長崎新聞社は大みそかから1月3日まで、コンピューターメーカーのシステムエンジニアが24時間態勢で本社に待機。元日午前1時から輪転機の作動状況を再度、チェック。電算システム担当者も同7時から、各部門での作動状況を確認する。

◎その他

 石油販売、コンビニエンスストアなど多角的に事業展開している松早グループ(長崎市)は「万が一の公共交通機関のトラブルに備え、輸送手段の確保などを検討したい」。
 警備会社の長崎綜合警備(同)は、年末年始に市街地を巡回する特別態勢を敷く。「金融機関などからトラブルの連絡が入れば、即座に駆け付けられる」としている。
 県中小企業振興公社中小企業情報センター(同)は、年末年始も2,000年問題の相談窓口を開く。「各企業ともシステムの最終点検を怠りなく」と呼び掛けている。
(平成11年12月1日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

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