マイナンバー 個人番号カード交付率向上へ企業訪問

 行政事務の効率化や住民の利便性向上などを目的に、2016年1月に運用が始まったマイナンバー制度。開始から3年近くが経過するが、同制度で希望者に交付される個人番号カードは全国的に普及が進んでいない。こうした中、長崎県松浦市は交付率向上にと、職員が企業に出向いて個人番号カード申請を受け付ける新たな取り組みを始めた。
 10月10日午後、調川町の住商エアバッグ・システムズ。会議室には、従業員がシフト交代の空き時間を利用して次々と姿を見せた。この日、個人番号カードを申請したのは25人。必要書類の記入と写真撮影を約5分で終え、業務に戻っていった。
 同社の人事担当者は「従業員が余暇を申請に充てずに済むのは会社側にもメリットがある。カードを持っていれば災害時の本人確認がスムーズになるので申請を推奨している」と話す。
 マイナンバーは、社会保障や納税などに関する情報を一元的に管理するため、国が全国民に割り当てた12桁の個人番号。国は15年秋以降、番号を知らせる通知カードを国民に送付し、16年1月から制度がスタート。各自治体はその後、顔写真とICチップの付いた個人番号カードの交付申請を呼び掛けてきた。
 一方、制度を巡っては、戻ってきた未達の通知カードの保管に苦慮している自治体が少なくない。未達の原因は、住民票を移さずに引っ越したケースが多いとみられている。同市も74件(10月15日時点)を保管し続けている。
 個人番号カードの交付も全国的に進んでいない。同市によると、9月末時点の全国平均は11・92%。全国1位の宮崎県都城市でさえ27・32%(9月末時点)と3割を切っている。松浦市は10・61%で、県内9番目の普及率という。
 マイナンバーは現在、社会保障、税、災害対策の3分野に限定されており、市民がメリットを感じづらい側面がある。市内の30代女性は「身分証には免許証や保険証を用いており不便がない。個人番号カードは必要性を感じづらい」と話す。こうした声に同市の担当者は「今後は公共施設のカードなどに利用範囲が拡大する見込み」とし、特に災害発生時は「個人番号カードのみで避難生活、その後の再建に向けた手続きがスムーズになる」と強調する。長崎市など県内のほかの一部自治体では、個人番号カードを使い、コンビニで住民票の写しなどが取得でき、松浦市は交付率の推移を見ながら導入を検討する考えだ。
 同市は今後も企業訪問を続け、制度の周知に努めるという。企業訪問に関する問い合わせは市市民生活課(電0956・72・1111)。

企業に出向き、個人番号カードの申請方法を伝える市職員(中央)=松浦市、住商エアバッグ・システムズ

© 株式会社長崎新聞社