メクル第320号 プラー・ブック 世界最大級の淡水魚

 「あ、サメだ!」。自分たちの体よりも大きな魚に、子どもたちが熱い視線(しせん)を送っている。長崎市宿町の長崎ペンギン水族館にいるプラー・ブック。タイ語で「大きな魚」という意味。水槽(すいそう)の中にいるプラー・ブックは全長2メートル程度(ていど)だが、大きな川で成長すると3メートル、体重300キロにもなるんだって。世界最大級の淡水魚(たんすいぎょ)だ。国内での飼育(しいく)は同館と岐阜(ぎふ)県の世界淡水魚園水族館の2カ所だけ。
 東南アジアのメコン川に生息してるから、別名「メコンオオナマズ」。サメじゃなくてナマズなんだね。「よく見ると、口の下の方に細い白い毛があるんです」と、魚類担当(たんとう)学芸員の大塚摩耶子(おおつかまやこ)さんが教えてくれた。野生の数がどんどんへっていて、絶滅(ぜつめつ)するおそれがあるそうだ。
 旧(きゅう)長崎水族館時代の1992年7月、研究に役立ててほしいという思いと友好のしるしとして、タイ政府(せいふ)から長崎市にプレゼントされた。寿命(じゅみょう)はよく分かっていないが、当時1、2歳(さい)だったから、もう30年近く生きている。全部で5匹(ひき)。名前は当時のサイズ別に「S、M1、M2、L1、L2」。シンプルだね。一番小さかった「S」が、一番大きくなったんだって。食いしん坊(ぼう)なのかな。
 丸みをおびたシルエット。ゆっくり、のんびり泳ぐすがたを見ていると、幸せな気分になる。みんな仲良くくらしているけれど、赤ちゃんが生まれたことはまだなくて「いつか卵(たまご)を産んでくれたらいいな」と大塚さん。みんなでのんびり、見守っていきたいね。

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