藤井七段も受けた教育法 「能力開花、集中力養う」

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芦屋大付属幼稚園園長の安藝雅美さん=芦屋市(撮影・辰巳直之)

 「モンテッソーリ教育法」をご存じだろうか。物事を教え込むのではなく、子どもが興味を持ったことを好きなだけ繰り返すことで、達成感や自己肯定感を育む。将棋の藤井聡太七段が通った幼稚園が取り入れていることで注目される。詳しく話を聞いてみたくなり、専門家で芦屋大付属幼稚園園長の安藝(あき)雅美さん(52)を訪ねた。(吉村勇人)

 -モンテッソーリ教育法の特徴を教えてください。

 「一方的に教えるのではなく、『教具』と呼ぶ遊具を、子ども自身が興味に従って選び、遊ぶ。大人はそれを繰り返すことができる時間と環境を与える。イタリアの医学者、マリア・モンテッソーリが考案した障害児や貧困層への教育がルーツです。約110カ国で取り入れられ、日本でも幼稚園や保育園、幼児教室で、資格を持つ教師が教えています」

 「子どもは自分に適した教具を手にすることで、何度でも遊ぶようになる。繰り返すことで満足感と達成感を得ることができる。落ち着きのない子の心にゆとりが生まれるケースを見てきました」

 -「敏感期」がキーワード、と聞きました。

 「言葉や運動、感覚などそれぞれに能力が伸びる時期があり、それに合わせて適切な教具を用意したり、言葉を掛けたりすることで子どもの力を引きだそうという考えです。教師の役割は大きく、子どもが何に関心を持ち始めているのかを注意深く観察しなければなりません。とりわけ0~3歳の間を、人の発達において大きく成長する時期ととらえます」

 -日常生活の訓練に特徴があるとか。

 「掃除や洗濯など、子どもサイズの道具を用意して、やり方を教える。ドアの開け閉めやはなのかみ方なども、順序立てて説明すればできるようになります。さまざまな年齢の子どもでクラスをつくりますが、次第に年上の子が年下の子に教えてあげるようになる。そうすると人の役に立つことの喜びを学び、自信がつき、自己肯定感が生まれます」

 -教具にも工夫がされている。

 「例えば『ピンクタワー』という教具は、素材と色は同じですが、1立方センチメートル、2立方センチメートル…と大きさが異なる積み木で、体を使って『大きさ』という感覚に特化して学べます。また、文字の部分がざらざらになっているカードは、なぞることで文字が覚えられるようになっています」

 -地球儀も使うそうですね。

 「最初に陸地が1色の地球儀、次は大陸が色分けされた地球儀-と段階を踏みます。1色の陸地では、見せながら『人間は同じ地球に住む兄弟だよ』と伝える。モンテッソーリは、平和を愛する子どもを育てたいと願っていました。そうしたメッセージも広まっていけばいいと思います」

 -近所に専門の幼稚園がなければ、縁がなさそうです。

 「最近では『モンテッソーリ』とうたっていなくても、考え方を導入している幼稚園・保育園が増えている。押しつけではない教育、子どもの興味をすくい上げる教育という理念が広まってほしい。日常生活の訓練も含め、家庭での育児で保護者が参考にできると思う。子どもは本来、学ぶエネルギーを持っている。大人は、できないことを手伝うだけで十分です」

 -藤井七段が受けた教育法ということで注目を浴びています。

 「紙製バッグを作っていたと聞いています。毎日同じものを持って帰ってきたら、普通はつい『今度は他のものを作ってみたら』などと言ってしまいがち。親御さんが子どもの力を信じ、じっくり待ったからこそ、集中力を養うことができたのではないでしょうか。幼稚園と家庭が同じ考えでいる。それが大事だと思わされます」

 「モンテッソーリ教育を受けた人が皆、藤井七段のようになれるわけではない。だけど、本人が持って生まれた能力をしっかり開花させてあげたい。幸せな大人になるため、心と体の根っこを育てることを目指しています」 【あき・まさみ】1966年、大阪市出身。兵庫教育大大学院修士課程修了。モンテッソーリ教師の国際免許を持つ。芦屋大講師。2018年から同大付属幼稚園園長。神戸市西区在住。