硫酸1リットルかけられた女性活動家死亡 死の1カ月前、病床から「社会正義」訴える

By 太田清

ガンジュクさん。フェイスブックから

 旧ソ連のウクライナの市民活動家カテリーナ・ガンジュクさん(33)が4日、入院中だったキエフの病院で死亡した。ガンジュクさんは今年7月31日、ウクライナ南部へルソンの自宅近くで何者かに1リットルもの硫酸をかけられ、全身やけどを負い入院中だった。ガンジュクさんを支援する団体「誰がガンジュクさんの殺害を命じたか」が明らかにした。 

 ウクライナ誌「ノーバヤ・ブレーミャ」(電子版)などによると、トルコ訪問中のウクライナのポロシェンコ大統領は「人と言えない行為をした犯人は罰せられなくてはならない」と述べ徹底捜査を命じた。駐キエフ米国大使も哀悼の意を表するとともに、事件の真相解明を求めた。既に5人の容疑者が拘束されたが、ガンジュクさんの弁護士は犯行の背後関係が不明なまま訴追しても全容解明はできないとし、司法当局にさらなる捜査を求めていた。 

 ガンジュクさんは体の3分1以上にやけどを負い、何度か皮膚の移植手術を受け療養中だった。死の1カ月前に、病床から包帯だらけで右腕しか動かせない状態でビデオ撮影に応じ、ウクライナでは近年だけで40人以上の市民活動家が襲撃を受け、死亡もしくは重傷を負ったが、捜査への妨害などから一件も犯行の背後関係など全容が解明された事件はないとして、被害に遭った活動家一人一人の名前を読み上げた。 

 その上で、「最も積極的な活動家が殺害され、障害者になっている状況をいつまで我々は受け入れなければならないのか。いつからこうしたことが普通のことになってしまったのか」と、社会正義の実現を訴えた。 ビデオはこれまでに47万回視聴された。

 ガンジュクさんは、「オレンジ革命」と呼ばれた2004年の親ロシア政権による大統領選挙不正抗議運動に参加。汚職捜査の徹底や腐敗した官僚や政治家の糾弾などの活動のほか、ウクライナがロシアの影響下から離脱し欧州に統合されるべきだと主張。ウクライナ国内の親ロシア団体と衝突することも数々あった。 (共同通信=太田清)

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