三塁打の速さで見るパのスピード王5傑 フレッシュな顔ぶれを抑えた最速王は?

ソフトバンク・牧原大成【写真:藤浦一都】

4、5位にはルーキー2選手が堂々のランクイン

 野球の試合で三塁打を目撃できる機会は決して多くはない。もし、スタジアムで見ることができたなら大変貴重だ。一塁を回った打者走者が「よし、三塁打だ!」と加速し、トップスピードに乗って二塁ベースを勢いよく蹴り上げて、一気に三塁を目指すロングラン。そのスピードと高揚感は、一度味わったら病みつきになるに違いない。

 そんな魅力あふれる三塁打を放ち、パ・リーグトップ5の三塁到達タイムを記録した選手たちを紹介していこう。

 まず、5位に入ったのは、オリックスのルーキー福田周平内野手。文字通り、三塁ベースを手中に収めるようなヘッドスライディングでもぎとったタイムは、10秒90だった。

 ここで三塁打のタイム検証の考え方について触れておくと、「11秒を切るかどうか?」が1つの基準になる。プロは身体能力の高い選手が揃っているため11秒台は決して珍しくないが、10秒台はなかなか出るタイムではない。足に磨きをかけたスペシャリストだけが到達できる“聖域”とも言えるだろう。

 昨季ドラフト3位の福田は社会人出身の即戦力として期待され、1桁の背番号「4」を与えられたが、10秒台の聖域タイムを記録したことにより、そのスピードがトップクラスであることが改めて証明された形だ。

 身長169センチ。小柄でバットを短く持って打席に入るため、小技を効かせることが武器だと思われがちだが、実は思い切りのいいバッティングも魅力。三塁打が出るのも、鋭い打球を放って外野の間を抜くが故の結果だ。

 三塁打は新人に出やすいのか? 福田に続く4位にランクインしたのが、10秒89を記録した新人・山崎剛内野手(楽天)だという結果を見ると、ついそう思わざるを得ない。

 山崎は肩幅の広いガッチリした体型で、大変失礼ながら、一見すると俊足とは思えないだろう。だが、一度走り出すと重戦車が突進するようなスピードを誇る。野球選手というよりは、まるでラガーマンのような走りっぷりだ。

 國學院大時代からシュアな打撃と俊足を武器に活躍しており、その期待に沿う形で今季途中から1軍デビュー。山崎がスタメンに定着したのは9月のことだった。来年も迫力ある激走を披露して、走れる選手であることをアピールしていきたい。

2、3位にはリーグ覇者・西武の快足コンビがランクイン

 3位に入ったのは、16年に盗塁王を獲得した金子侑司外野手(西武)。10秒85という好タイムで堂々のランクインだ。

 その特徴は、何といっても美しいランニングフォームにある。スマートな体型に長い脚、ストライドの広い華麗な走りは、ロングランでその魅力が一層際立つ。しかも、金子侑の場合、ストライドの広さだけではなく、ピッチも速いのだ。

 それは最もトップスピードに乗っている二塁ベース付近の走りを確認すると良くわかる。広い歩幅で、なおかつものすごい回転の速さで疾走。このハイブリットな走法こそが、リーグトップクラスのスピードを生み出している。

 とにかく速い。そして、打球が外野の間を抜けた際は常に三塁打を狙っている。それが、10秒71で2位につけた源田壮亮内野手(西武)のプレースタイルだ。

 源田の場合、特に目を惹くのは、左中間を抜いた時の三塁打だ。左翼側の打球は、右翼側や中堅後方よりも守備側の送球距離が短いため、多くの選手が最初から無理せず二塁で止まることを前提に走るケースが多い。ところが、源田は左中間の打球に対しても躊躇なく三塁を狙い、そして奪い取る。単に速いだけではなく、自分の走力と相手守備陣のカットプレーの素早さを瞬時に比較できる判断力も優れているのだろう。

 今年の西武は、強力打線を全面に押し出してリーグ優勝を勝ち取ったが、2番を打つ源田が単純に走者を進めるだけでなく、こうした攻撃的な走塁をしていたことも見逃せない。

 西武打線の破壊力は一発だけにあらず……である。

飛び跳ねているようなホークス牧原の走り

 2位源田の10秒71を上回る10秒66を記録し、パ・リーグ唯一となる10秒6台で三塁打の頂点を極めたのが、今年の夏場以降に急成長を遂げた牧原大成内野手(ソフトバンク)だ。

 昨年までの牧原は、ファームから昇格しても1軍の壁が高く立ちはだかり、持ち味のスピードを生かす機会に恵まれなかった。しかし、今年は7月にセカンドで起用されるようになると、打撃で結果を残して定位置をキープ。ダイヤモンドを所狭しと駆け巡り、その潜在能力を解放させた。

 牧原のランニングは、一歩一歩飛び跳ねているかのようで、滞空時間が長く感じられる。このバネ仕掛けのような跳躍力が、スピードの源だろう。また、レギュラー定着に向けてがむしゃらにプレーしていたことも追い風になったに違いない。全力で走るひたむきさが、タイムとなって表れたと言えそうだ。

 それだけに、9月27日の西武戦で足首を負傷し、戦線離脱したことが惜しまれる。しっかりと故障を治して、来年、またパ・リーグトップのスピードで三塁にたどり着く姿を見せてほしい。

 以上が今シーズンの三塁到達タイムトップ5だが、興味深いのは、今季14本の三塁打を放ってリーグトップだった上林誠知外野手(ソフトバンク)がランキング外だったという点だ。理由があるとすれば、三塁打となった打球にある可能性が考えられる。上林の三塁打は、右中間を深々と破る大飛球が多かった。そのため外野からの返球が届く頃には楽々と三塁に到達しており、全力疾走する必要がなかったのかもしれない。

 また、今年44盗塁で自身3度目の盗塁王に輝いた西川遥輝外野手(日本ハム)もランク外。西川の場合、三塁打を打った場面を確認してみると、スイングした後、わずかながら打球の行方を見てから走り出すことがあり、その一瞬がタイムロスになったようだ。

 三塁到達タイムは、打ってからすぐに全力疾走する売り出し中の選手は上位に入りやすいと言えそうだ。そうなると、これは“今が旬”の俊足選手を見出す1つの指標になるのかもしれない。

 来年はまた新しい選手がトップ5に並ぶ可能性がある。どんな選手がランクインするのか、今から楽しみだ。(「パ・リーグ インサイト」キビタキビオ)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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