森達也 「虐殺のスイッチ」多くの殺人現場を取材した著者の目に見えて来たもの。それは加害者側の声の重要性だった!

超リベラル派の森達也は自分は空気を読めないKYなのだと言う。だから世間がオウム事件を危険視し大パッシングする中、自分はオウムの本部に入り込み、映画を作り続けることができた。その結果、「オウムを擁護している」とず~っと批判され続けて来た。この本の主要テーマは、「一人すら殺せない人がなぜ多くを殺せるか」「なぜ人は人を殺すのか、大量殺人の仕組みとは」。現代日本の、「指導者の忖度が始まった社会は危ない」と言う。多くの殺人現場を取材した著者の目に見えて来たもの。それは加害者側の声の重要性だった! 「この世は虐殺に満ちている」のだ。森達也の基本スタンスは、「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」なのだ。虐殺の歴史は今のいじめまでもちゃんと繋がっているのだ。若い人に読んでほしい寡作な作品である。(平野悠)

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