総領事の公邸料理人に着任へ 大村の「ちとせ鮨」店主

勢戸孝幸さん「カナダで本物のすしを」

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 「味の外交官」と呼ばれる公邸料理人として、長崎県大村市桜馬場1丁目の「ちとせ鮨(ずし)」の店主、勢戸孝幸さん(54)が11月初旬から2年間、カナダに赴く。「めったに経験できないこと。年齢的にも成長できる最後のチャンス」と意気込んでいる。

 長崎県大村市出身。高校卒業後に上京。東京・築地で1年半ほど修業していたが、母親の体調が悪かったため帰郷。長崎市内で、昼は割烹(かっぽう)旅館、夜はすし屋で腕を磨き、22歳のころに母親が営んでいた大村市の店を継いだ。十数年前からは料理人の神田川俊郎さんもプライベートで訪れる人気店となり、大村市の向陽高調理科で、すしの授業も担当している。

 「長崎人は魚の歯応えを重視する。もちもちとした質感をいかにして出せるか」。酢でしめたり、調味料に漬け込んだりする江戸前の技法を使いながら新しいスタイルを模索。「客が苦手なネタでも何とかして食べてもらえるように」と趣向を凝らす。「苦手なネタを初めておいしく食べられた」という客の声が励みになるという。

 知人を介し、公邸料理人のオファーが来たのは7月中旬ごろ。着任前に、すし職人を探していた駐モントリオール総領事からだった。当初は店を空けられないと固辞。しかし、残ったスタッフによって店を守ることができると判断したことや、友人らの後押しもあり承諾した。

 現地では各国の要人や外交官らを招き、週に2、3回開かれるパーティーですしを握るほか、総領事と家族の日々の食事も担う。既に、総領事から「担々麺を食べたい」というリクエストもあり、「専門外だけど、研究しなければ」と苦笑いする。

 「外国には見よう見まねのすし屋も多いと聞く。日本人の板前として正しい日本食の普及に貢献したい」。本物のすしを伝えるために、現地ではボランティア活動にも力を入れるつもりだ。

「正しい日本食の普及に貢献したい」と語る勢戸さん=長崎県大村市桜馬場1丁目