【現場を歩く】〈千代田鋼鉄工業・流山センター(千葉)〉カラー鋼板製品の物流加工拠点、幅広い工事案件、受注可能な布陣に 素材から最終製品まで一貫サービスを充実

 小棒電炉でカラー鋼板メーカーの千代田鋼鉄工業(本社・東京都足立区、社長・坂田基歩氏)は、千葉県流山市にカラー鋼板製品の物流加工拠点「流山センター」を新設した。カラー鋼板事業の中核拠点「市川工場」(千葉県市川市)の業容拡大に伴い、一部の製品置場と加工工場の機能を移管して10月から本格稼働している。創業70周年を迎え、本社と軒を連ねる綾瀬工場で手掛ける鉄筋用棒鋼とともに、素材から最終製品まで一貫したサービスのさらなる充実に向けて加速するカラー鋼板事業の取り組みに迫った。(中野 裕介)

 流山センター(流山市芝崎)は市川工場から24キロの千葉県北西部に立地し、輸送網が良好。外環自動車道や圏央道、常磐道などからのアクセスに恵まれる。センター近くでは国道6号(水戸街道)に通じる道路の整備が進むほか、徒歩15分でつくばエクスプレス「流山セントラルパーク駅」がある。従来賃借していたヤードから在庫機能を自社の倉庫に切り替え、首都圏や近郊の建設現場へのタイムリーな出荷に対応。繁閑に応じて市川工場と作業人員を共有でき、雇用にも優位な地の利とあって、「モノ」「ヒト」の両面で事業を支える原動力の醸成に期待がかかる。現場3人、事務1人の4人体制で始動する流山センターでは、今後の受注状況次第で増員や市川工場と同様に2直の稼働も視野に入れる。

 流山センターの敷地面積は3320平方メートルに上り、建屋は折板ヤード(872平方メートル)とコイルヤード(696平方メートル)で構成する。横河システム建築が設計・施工を手がけ、自社の戦略製品「チヨダカラーGLNEXT」と「チヨダカラーGL輝き」の濃淡2色で織りなす外装が存在感を引き立てる。

 構内には、折板・角波成形機5基(ルーフデッキ88型・150型・66型・ハゼ2型・角波W800)と熱融着タイプの断熱材裏張り機1基があり、8月の賃借契約を経て、いずれも9月までに市川工場から移設した。1992年から金属屋根加工事業を展開する市川工場で設備や製品、部材の増加でスペースや物流の解消が課題になるとともに、昨年夏に導入した大型スリッターの加工量が来年以降大幅に増える見込みとなり、新たなカラー鋼板製品の物流加工体制を構築する運びとなった。

 流山センターは1200トンの在庫能力を保有する。市川工場が関東以西に対し、関東以北に出荷するカラー鋼板製品の中継地としての機能を果たす。物流倉庫や工場などで相次ぐ折板屋根の大型物件への対応も念頭に、長尺の現場成形で吊り上げ時に必要な三角トラスも取りそろえるなど、幅広い工事案件の受注が可能な布陣を整える。すでに1万平方メートルを超える新規物件を獲得するなど、各地に張りめぐらせる協力会社のネットワークを活用し、材料の供給とともに市場から要請が高まる施工分野にも事業領域を広げる。

 市川工場の大型スリッターをめぐっては、自社のカラー鋼板以外の受注にも広く対応できるよう設備を改良。年末年始には新たに18トンクレーンを導入するなどし、加工量は現状の月間500トンから1千トン規模への増加が射程に入り、2019年度には2千トン程度にまで引き上げていきたい考えだ。

 市川工場ではホットメルトタイプの成形機2基を導入し、嵌合式立平屋根の新製品「立平金時(たてひらきんとき)」の生産に乗り出す。横葺き、金属成形瓦と合わせて住宅向けの屋根材がそろい、従来のホームセンター向けをはじめ、新築・リフォーム業者や屋根工事といったリテール部門の強化につなげる。母材には遮熱塗装鋼板「チヨダカラーGL輝き」を採用。低光沢で高輝度な素材感が表面のへこみを視覚的に抑えることから、今後の拡販に期待がかかる。計画では、立平金時について初年度に月間2千~3千平方メートルの販売目標を掲げる一方、軌道に乗った段階で流山センター(流山市)に移設。両拠点を通じて持続的に競争力の源泉を創出するサイクルを構築する。

 主戦場の国内建材薄板市場において、いかに独自性を高めていくのか―。業界の絵図が変遷する中にあって、カラー鋼板と金属屋根製品の普及に向けて、多彩なメニューで川下分野に切り込んでいく。板金業の協力会社と連携し、足元で着実に施工実績を上げているリフォーム工事もその一環。折しも今年は、千代田鋼鉄工業が創業70周年を迎えるのとともに、カラー鋼板の製造を開始した1968年(昭43)から半世紀の節目でもある。激動の市場を乗り越えてきた今、市川、流山の新旧拠点を両輪に据え、ソフト、ハードの両面で差別化を図り、勝ち残りへの道筋をつけていく。

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