カギは「生産性」「フロント」 主力選手の移籍、少ない予算の中でFC琉球が優勝できた理由

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 J3で最速優勝を決めたFC琉球の躍進の裏には、プレーヤーの努力はもとより、選手を支えるフロントの工夫は見逃せない。李済華GMは「チームの財政は豊富ではない。うまく、安く、無名の選手を獲得するしかない」と選手集めの視点を語る。一見、苦肉の策と映る方針だが、琉球は、勝ち点1を取るための人件費を示す「生産性」で2017年試算はJ3で3位。調査した日銀那覇支店は「人件費が高いチームが必ずしもよい結果を残しているわけではない。FC琉球は必ずしも潤沢とはいえない人件費で健闘している」と分析している。

 (喜屋武研伍)

 今シーズン開幕を前に多くの主力選手が移籍した。戦力を不安視する関係者もいたが、李GMは「体や技が出来上がっている選手が他チームに取られるのは宿命」と捉えていた。

 前向きな姿勢には確かな実績が背景にあった。16年にDF増谷幸祐が大卒ルーキーとして加入した。当たり負けしないフィジカルの強い選手をCBに起用するのが定石だが、「テクニックもあるし、状況判断も速い。琉球のサッカーを表現できるだろう」と金鍾成監督やフロント陣と話し合い、172センチの増谷を迎え入れた。狙いは的中。今では瀧澤修平らとともに、攻撃力を後押しするディフェンダーの1人となった。

 今季は播戸竜二や枝本雄一郎ら実績のある即戦力選手に加え、大卒ルーキーの徳元悠平(那覇西高―城西国際大)や和田凌(阪南大)らを加えた。未知数だった若者は、徳元が左サイドバックで、和田はワントップとして活躍。優勝を決めた群馬戦でもチームをけん引した。資金だけに頼らず、選手を“発掘”し、育て上げる流れがここ数年出来上がる。

 サポーターとの一体感も琉球の強さの要因だ。サポーターは、J1のチームに引けを取らないと琉球のファンサービスの高さを評価。選手とサポーターの距離の近さを示す場面が群馬戦終了後にもあった。優勝セレモニーが終わった後、選手は一目散にサポーターの下に駆け寄り満面の笑みで握手、ハイタッチで喜びを共有した。

 県民にこよなく愛される琉球。以前の「会社単位の動員感のある応援席」の雰囲気を変えたのもフロント陣の姿勢の変化があった。16年12月、運営母体の琉球フットボールクラブの新社長に就任した倉林啓士郎氏。「県民のために、(スタッフが)当たり前のことをやっていなかった」。営業スタッフを増やし、売り込みに対し消極的なスタッフへの意識改革も行った。

 イベントやハーフタイムショーも充実し、試合はもちろん、観客が「見ていて飽きない」会場づくりを徐々に築き上げていった。ジンベエザメをモチーフにしたマスコット「ジンベーニョ」は17年の「Jリーグマスコット総選挙」で1位を獲得するほど人気者だ。

 ソフト面の地道な努力は実を結び、スポンサー数は16年の56社から17年は130社、ホーム戦の1試合平均の観客数は1561人から2508人に増加した。限られた予算でJ3の頂点まで上り詰めた。地方球団の見本となるような戦いぶりは、J2でも注目される。