軍艦島観光 台風被害で年内再開は「不透明」

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 台風25号の影響により、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」を構成する長崎市の「端島炭坑」(軍艦島)が損壊し、長崎市が上陸を禁止して7日で1カ月がたつ。長崎市は復旧時期について、被害が大規模なため「年内に工事が完了するかどうかは不透明」とし、長期化の可能性も出てきた。上陸観光クルーズの運航会社は相次ぐ利用客のキャンセルに、一日も早い上陸再開を長崎市に訴えている。

 5日、長崎市常盤町の桟橋。「せっかくだったら軍艦島に上陸したかった、残念。上陸するのと周遊するだけでは感じ方が違うと思う」「世界遺産を市はまだ修繕しないなんて、いつ工事に取り掛かるのだろうか」。愛知県の女性(80)ら4人組の観光客は、口々に感想を述べた。

 長崎市観光政策課によると、軍艦島の台風による損壊、上陸禁止は今年7、8月に続き今回で3度目。先月上旬の台風25号で、見学エリアの歩行通路約230メートルの左右の鉄柵がほぼ全壊したほか、通路外のがれきや土砂が通路や見学広場に流入した。観光客が上陸する桟橋や、桟橋と島をつなぐ「連絡橋」も手すりが全壊した。

 長崎市観光政策課は、復旧作業に向け近く施工業者を決定する予定。しかし、上陸観光クルーズの運航会社5社は、利用客の減少に悲鳴を上げている。

 運航会社の一つ、軍艦島コンシェルジュの久遠裕子統括マネジャーによると、本来、多客期に当たる10、11月に約7千人の予約キャンセルがあったといい、「死活問題。市は早く復旧してほしい」と憤る。軍艦島クルーズの担当者も「いつもなら満席の約200人近くが利用するのに、今は半分。上陸ができないことが理由として大きい」と肩を落とす。

 なぜ、復旧作業にすぐ取り掛かれないのか。

 長崎市観光政策課は「想定外の被害」を理由の一つに上げる。7、8月の被害は手すりなどが一部壊れたが、長崎市職員が予備の部品で対応し、いずれも1週間以内で復旧できた。今回は、通路のコンクリートがはがれるなどして上陸客が足を運ぶ場所がほぼ壊れるなど被害が広範囲なため、見積もり作成や部品が届くまで時間がかかるという。

 長崎市観光政策課によると、着工できても冬になるとシケのため作業ができず、復旧まで時間がかかることも考えられるという。長崎市観光政策課は「一日も早く上陸可能な環境にできるよう努める。今後も同様のことがあると考えられるので、備品を用意するなど体制を整えたい」としている。

柵が折れ曲がり、がれきが流入した歩行通路=長崎県長崎市、端島(長崎市提供)