<金口木舌>「さま」と「さん」のはざま

©株式会社琉球新報社

 テレビのワイドショーは先週、高円宮家の三女絢子さまと守谷慧さんの結婚を熱心に取り上げた。新郎新婦の人柄に加え、衣装や引き出物は関心の的となる。見ていて気になったのは敬称のこと▼先月29日の結婚式を「絢子さま」、30日の晩さん会を「絢子さん」とメディアは報じた。守谷さんとの結婚で皇族を離れ、民間人となったことによる敬称の変更である

▼メディアの敬称変更とは関わりなく、当人は「さん」と呼び合う社会に順応するだろう。ただ、旧憲法下、皇族が皇籍から離れることを「臣籍降下」と呼んだ時代の名残を見る思いがした。言い過ぎだろうか

▼こちらは新鮮だった。開会中の衆院予算委員会で、野田聖子委員長は国会議員や閣僚を男女問わず「さん」と呼んだ。慣例の「君」よりしっくりくる。時には怒声が飛び交う場を和ませる効果もあろう

▼1993年、衆院議長に就任した土井たか子さんが「さん」を用い、話題となった。2009年に衆院議長となった横路孝弘さんは「さん」と「君」を使い分けた。いずれも国会の慣例に風穴を開ける試みだった

▼「さま」であれ、「さん」「君」であれ、敬称は文字通り、敬意を込めて使いたい。性の多様性を尊重する流れの中で、小、中学校での敬称の用い方も議論となろう。「さん」や「君」を形式的に使ってはいないか、立ち止まって考えてみたい。