感動を届けたい ニューヨーク混声合唱団

未経験者も歓迎

毎週火曜日の夜7時、ニューヨーク混声合唱団(NYMC)の団員たちが、日系人会館に集っている。プロの指揮者とピアノ奏者に加えてボイストレーナーの指導が付いている上に、年に2回の練習合宿もある「本気度」の高い合唱団だ。

団長の遠田礎史(もとふみ)さんをはじめ団員たちは、「観客の皆さんに、感動して泣いていただくことが目標です」と口をそろえる。

この日は11月10日に迫った年に1度の定期演奏会に向け、練習にさらに熱が入る。今回の演奏会で披露する曲の中から、指揮者のコルナ紗綾(さや)さんの指導で、まず「遙(はる)かな友に」の練習からスタートした。

「静かな夜更けに〜」と、まずソプラノだけで声合わせをする。「いっぱい息をして、ちょっとハミングして」「懐かしむ感じに、ちょっとゆっくりいきましょう」とコルナさんは、団員たちがイメージしやすい言い回しで指揮する。

「上を向いて歩こう」「海はなかった」の後、「アメイジング・グレイス」などの英語曲の他に、イタリア語による「いとしのマドンナ」やドイツ語による「魔笛」などの練習へと続き、男女それぞれの四つのパートのハーモニーが広がっていく。 

コルナさんの指示を受け、団員たちはいろいろな歌い方で試行錯誤を重ねている。「今の、みんなで少し口を開けてハミングするバージョン、すごくいいですね」と、ようやくコルナさんの表情が明るくなった。

会社員の宮本武俊さん(テナー)は入団して3年。「子供から『となりのトトロ』の歌を歌ってと言われて、全く合唱歴のないまま入団しました。サポートがしっかりしていて、プロの先生方も教えてくれるので、楽譜の読めない私でも歌えるようになりました」と毎週の練習を楽しみにしている。

友達作りのために入団したという石本育栄さん(アルト)は、「声を出すとリラックスできて気分転換になります。入団して1年ですが、大学の部活みたいで打ち上げも楽しいです。同じパートの人たちが家に集まって練習したり、皆さん熱心ですね」と話した。

「この合唱団は出席率がよくて、みんな真面目に練習に取り組んでいるので、レベルが高いです」と言うのは合唱歴35年の藤田小夜子さん(ソプラノ)で、「今年の演奏曲には、私の出身地福島県の曲、『会津磐梯山』と『群青』」が入っているので思いが深いです」と感慨深げだった。

今年もまた、観客に感動を届けてくれることだろう。

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