スバル 新型フォレスター アドバンス試乗|マイルドハイブリッドe-BOXER搭載モデルを改めてテスト

スバル 新型フォレスター Advance(アドバンス) エンジン:2リッター+e-BOXER(マイルドハイブリッド)/ボディカラー:セピアブロンズ・メタリック

クロスオーバーSUV市場のど真ん中を行くフォレスター

世界的にクロスオーバーSUV人気が止まらない。元々はニッチな市場だったはずだが、今やどの自動車メーカーも主力モデルとしてエース級のモデルを投入している。ただ、一口にクロスオーバーSUVと言いながらも、オンロード主体/オフロード主体、カッコよさ重視/ユーティリティ重視と言ったようにジャンルは細分化されている。そんなクロスオーバーSUV市場のど真ん中を行くのがスバル フォレスターである。

初代モデルは1997年に登場。個性派揃いのスバル車の中では比較的大人しめな存在だったが着実にユーザーを獲得。そのキャラクターが大きく花開いたのは2007年に登場の3代目からだ。SUVらしさをより強調したコンセプトがクロスオーバーSUVブームと相まって販売台数は大きく増加。好調の北米販売をけん引すると共にグローバル販売トップとなるスバルのエースへと成長した。

そんなフォレスターだが、現行モデルとなる5代目は7月に登場。すでにインプレッションはお届け済みだが、今回は改めて「e-BOXER」を搭載する新型フォレスター「アドバンス」にフォーカス。実はアドバンスのみ販売開始が9月と遅れたにも関わらず、販売台数の44%を占める人気グレードとなっている。その秘密を探るため、箱根近郊のワインディングを含めたリアルワールドでチェックしてみた。

スバル 新型フォレスター Advance(アドバンス) エンジン:2リッター+e-BOXER(マイルドハイブリッド)/ボディカラー:セピアブロンズ・メタリック

多くの人が使う実用域での性能にこだわったハイブリッド制御

スバル 新型フォレスター Advance(アドバンス) エンジン:2リッター+e-BOXER(マイルドハイブリッド)/ボディカラー:セピアブロンズ・メタリック

新型フォレスター アドバンスのパワートレインは、145ps/188Nmを発揮する2リッター直噴の水平対向4気筒(FB20)にモーターを内蔵したリニアトロニック(CVT)を組み合わせる「パラレルハイブリッド」である。機構的には先代XVハイブリッドに搭載されたシステムと同じながらも多くの部品を刷新。モーターのポテンシャルを最大限に活かすために電気部品は9割が新規開発された。バッテリーはニッケル水素からリチウムイオンバッテリーに変更されたことで電圧もアップ。その結果、出力自体は13.6ps/65Nmと変更ないものの、実用出力はアップしている。

また、これまでは個別に配置されていたバッテリーとインバーターなども一体化、機能も集約することで小型化にも成功しているものの、エンジン始動は通常のスターターモーター、アイドリングストップからの復帰はISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)と使い分けている所や、エンジンルーム内に12V用バッテリーを2個搭載するなど、システム的には無駄が多いのも事実だ。

まずはSIドライブ「I」でスタート。ガソリン車は水平対向エンジン特有の発進時の応答性の悪さをスロットル特性でごまかしている部分があるが、e-BOXERはモーターアシストをプラスすることでスッと自然に動く。そういう意味ではホンダのIMAのようにエンジンに自然に上乗せされたアシストで、2.2~2.3リッターのNAエンジンのような感覚である。

一方、SIドライブ「S」にすると、電動化を意識させるアシストに代わり、アクセルを踏んだ瞬間からグーッと立ち上がる力強さは、まさに「電動ターボ」と言ってもいい。特に今回のようなワインディングではアクセル操作に忠実に反応してくれるので、非常にリズミカルに走れるのが嬉しい。限定的に言えば従来のターボ車の役目をカバーしている。

ただ、どちらのモードも絶対的なモーター出力やバッテリー容量の関係でモーターアシストは高回転域まで続かないのも事実だ。開発責任者の布目智之さんは「あれもこれもと欲張らずに、多くの人が使う実用域での性能にこだわった結果」と語るが、それならメルセデス・ベンツの48Vハイブリッドのように、モーターとエンジンの得意な所を切り分けたほうが水平対向エンジンのメリットがより活きる気がするのだが……。例えば、初期のEJ20ターボとe-BOXERの組み合わせなら、実用域のドライバビリティを確保しながらも、高回転まで楽しめるユニットになりそうだが!?

スバル 新型フォレスター Advance(アドバンス) エンジン:2リッター+e-BOXER(マイルドハイブリッド)/ボディカラー:セピアブロンズ・メタリック

ドライバビリティを向上させるための電動化

スバル自身、このe-BOXERを「ハイブリッド」ではなく「モーターアシスト」と位置付け、電動化の力を燃費/環境性能だけでなくドライバビリティやドライビングファンを引き上げるため……と語るなら、考え方の転換も必要だと思っている。

ちなみに燃費はガソリン車と同じ道を同じペースで走らせて約2割アップを確認できた。ところが燃料タンク容量がガソリン車の63リッターに対してe-BOXERのアドバンスは48リッターと航続距離で見るとe-BOXERのうま味が出ないのが残念な部分。これは年次改良でガソリン車と同じ燃料タンク容量に、改善して欲しい所だ。

スバル 新型フォレスター Advance(アドバンス) 2リッター+e-BOXER(マイルドハイブリッド)
スバル 新型フォレスター Advance(アドバンス) エンジン:2リッター+e-BOXER(マイルドハイブリッド)/ボディカラー:セピアブロンズ・メタリック

動的質感の高さはSTIコンプリートに匹敵!?

フットワークはどうか? 新型フォレスターのプラットフォームはSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を採用。元々電動化を視野にいれた設計のため大きな変更はないが、e-BOXER化によりノーマル+110kg重く、前後重量配分もやや後ろ寄りになる事から、サスペンションはショックアブソーバーがガソリン車のノーマルタイヤ仕様(ツーリング/プレミアム)にスプリングレートを高めたアドバンス専用セットアップとなった。足元は225/55R18サイズ+専用アルミホイールの組み合わせである。

ガソリン車で感じた、「違和感のないシットリしたステア系」、「操作に対して正確にクルマが動く」、「4つのタイヤにシッカリ仕事をさせる」、「ストローク感の高いしなやかさ」、「アタリのやさしい快適性」、「抜群のロールコントロール」に加えて、アドバンスは、「シットリしたサスの動き」、「安心感の高い接地感」、「前後バランスの良さ」、「前後左右方向共に無駄な動きを抑えたハンドリング」がプラスされている。更に細かい部分で言えば、ガソリン車は強いて言えば軽快なクルマの動きに対してステアリングのアシストが若干重めだが、アドバンスは110kgの重量増により、若干ダルになったクルマの動きとステアリングのアシストのバランスが絶妙だ。

このように新型フォレスター アドバンスの乗り味は現行スバル車ベストで、動的質感の高さはSTIコンプリートカーに匹敵するレベルだと思っている。

スバル 新型フォレスター Advance(アドバンス) エンジン:2リッター+e-BOXER(マイルドハイブリッド)/ボディカラー:セピアブロンズ・メタリック

アドバンスは落ちつきと品があるコーディネイト

アドバンスのエクステリアは、ピアノブラック調塗装+メッキ加飾のフロントグリル&フォグカバー、メッキ加飾のフロント&リアバンパーガード+サイドクラッディング、メッキドアハンドル、光輝ウィンドウモール、サテンメッキドアミラー、専用デザインの18インチアルミホイール(ダークメタリック塗装&切削光輝仕様の)などヒカリ物をプラスすることで、フォレスターのカジュアルさに嫌みなく“華”をプラスした印象だ。

インテリアも、エクステリア同様に光輝シルバー加飾付ピアノブラック調シフトパネルや2連ダイヤルタイプの空調コントロールスイッチなどヒカリ物をプラス。オプションで本革シート+表革巻インパネ&センタートレイ、ソフトパッドタイプフロアコンソールリッドが選択可能だが、アドバンスのみブラウン内装を用意。このブラウン内装はこれまでのスバル車にはない落ちつきと品があるコーディネイトで、新型で大きくレベルアップしたインテリアをより引き立たせている。

また、アドバンスのみ採用の「ドライバーモニタリングシステム」はインパネ上部にあるマルチファンクションディスプレイ付近にあるカメラを用いて、ドライバーのわき見/居眠りを推定して注意を促すことで安全運転をサポートする機能だ。それ以外にも登録したドライバーを顔認証によって判断し、シートポジションやドアミラー角度、空調設定の自動調整も可能にしている。ただ、個人的には今後はナビ設定やステアリング位置(電動化が必要だが)、エンジン/CVTの特性など、より詳細な設定ができると嬉しい。

水平対向エンジンの未来の鍵を握るe-BOXER

ちなみに見た目の印象からオンロードを向いているように感じるが、最低地上高220mmも含めてガソリン車と全く同じな上に、モーターアシストのより実用域のドライバビリティが上がっている分、悪路走行時のアクセルコントロールも優れているので、オフロード性能も全く心配はいらない。

スバル新型フォレスター アドバンス(e-BOXER)の気になる価格は、ガソリン車の最上級グレードであるプレミアム+7万5600円。ドライバーモニタリングシステムがプラスされることを考えると“ほぼ同じ”と言っていい。ユーザーにとっては非常に喜ばしい事であるが、スバル自身は予想以上の売れ行きに困惑(=儲けが少ない!?)しているそうだ。

ガソリン車のバランスの良さは認めるものの、従来の延長線上のモデルである事も事実だ。対する新型フォレスターのe-BOXERは、まだ荒削りな部分はあるが未来のスバルが少し見える。水平対向エンジンは長年の改良で燃費や環境性能を改善してきたが、他のエンジンと比べると……。今後も水平対向エンジンを継続するためには電動化は重要な要素だ。そのためにはより多くの人に展開する必要がある。そう考えると、いっそ思い切って日本向けのフォレスターはe-BOXERが中心のラインアップ構成にしてもいいのでは??

筆者:山本 シンヤ/撮影:和田 清志/スバル

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