【素材技術で新市場に挑む シリーズ「EV化」企業編(9)】〈JFEテクノリサーチ〉製品開発の短期化後押し 車載電池試作など受託サービス充実

 電気自動車(EV)の開発競争が激化する中、車載電池やモータといったEV関連産業で製品開発の短期化を目指す動きが強まっている。そこに商機を見いだしたのがJFEグループの試験会社、JFEテクノリサーチ(本社・東京都千代田区、社長・津山青史氏)だ。顧客企業から製品試作や部材の解析・評価を請け負い、開発速度の向上を後押しする。車載電池やモータ部材などを対象とした多彩な解析・評価サービスが強みだ。

 「おかげさまで数カ月先まで注文が埋まっています」。JFEテクノの車載電池試作サービスは客足が引きも切らない。機能材料ソリューション本部長の遠藤茂取締役は「リチウムイオン二次電池の試作だけでなく、試作後の電池がどう劣化するかまで評価・解析できる一貫の受託体制を整えている」と好調の理由を説明する。

 連続塗工機やロールプレス、電解液注入装置。千葉事業所(千葉市)の一室に並ぶ電池の試作設備はフル稼働が続く。本格開始した2012年度と比べ今年度の同事業の売上高は倍増する見込みだ。

 さらなる商機をつかむ準備も怠らない。今年から次世代電池の本命とされる全固体電池の開発支援にも乗り出した。主流の硫黄系に対応するため、安全に留意した専用の簡易気密室を千葉市と川崎市の2拠点に整備。顧客から預かったサンプルを電子顕微鏡にかけ、電池性能のカギを握る固体電解質と活物質の界面状態をナノレベルで詳細に解析する。

 EV関連のメニューは電池だけではない。モータ関連では電磁鋼板など構成部材の磁気特性を分析・評価。CAE(コンピュータによるエンジニアリング)の専門家も抱えており、開発中の磁石がモータのトルクに与える影響などをコンピュータ上で高精度に解析できる。

 EV化に伴い需要が増えるハイテンやCFRPなど車体軽量化材料の分析・評価、インバータの耐久・耐環境試験などにも対応。メニューが幅広いと顧客の評判は上々で、自動車産業向けの売上高はここ数年、年率20%ずつ伸びているという。

 合言葉は「ものづくりのベストパートナー」。顧客企業の技術課題の解決を後押しし、さらなる成長を目指す。

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