金属行人(11月8日付)

 鉄をガスやプラズマ、レーザで熱切断(溶断)する設備の開発・製造・販売を手掛ける国内溶断機メーカー大手2社が昨春、今秋にそれぞれ創業100年を迎えた▼1社は日酸TANAKAで、もう1社は小池酸素工業。日酸TANAKAの前身は田中製作所で、その創業者田中亀久人氏は国産第1号のガス溶接器と溶断器を完成し、わが国における「溶接・溶断の父」と称される▼もともと金属スクラップ商で財を成したが、溶接技術を広めたいとの信念で転身し研究に没頭。海外製品を模倣しながら安全性や使い勝手を高め「日本人による日本人のための溶接器」を誕生させた▼小池酸素工業の創業者小池清一氏は、陸軍の仕上げ工として技能研さんを積む中でいち早く酸素溶断器具の将来性に着目。独立後も発明工夫に精励し、多くの実用新案・特許を登録した。国産第1号のフレームプレーナを完成させ「門型」を世に出した▼両社100年の歩みは、国内溶断設備の進化の歴史そのものである。ニッチながら厚板溶断業はじめ建設、造船、建機・産機、重電といった産業の発展を縁の下で支えてきたモノづくり企業が、鉄と共に歩みながら大きな節目を迎え、そこからさらに成長していこうと切磋琢磨するのは喜ばしいことだ。

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