新日鉄住金ステンレスの二相鋼、「鳥取城址擬宝珠橋」復元工事に採用 史跡の木橋を水中で支える、耐久性や強度で評価

 新日鉄住金ステンレス(NSSC)の省合金二相ステンレスが国の史跡である鳥取城址擬宝珠橋の復元工事に採用された。擬宝珠橋は9月に完成し、引き続き鳥取城址全体の復元工事が進められる予定で、鳥取市の観光の目玉となることが期待されている。

 この物件は鳥取城址の外堀に架かる木製の擬宝珠橋を復元する工事で、国の史跡における復元橋としては国内最長。堀の底に残る橋脚の遺構を保全しながら、明治初期の資料を基に擬宝珠橋を忠実に再現するために、水面下に梁を構成してその上に木橋を乗せる新工法が採用された。

 この工法を実現する耐久性や強度を持つ材料として、NSSCが開発した二相ステンレス「SUS821L1」が構造部材(厚板)からボルト・ナットまで鋼構造物全体に採用された。SUS821L1製のボルト・ナットが公共工事に採用されたのは初めて。

 鳥取市は江戸時代に鳥取城の正面玄関だった大手登城路の復元整備を行っている。擬宝珠橋は1621年(元和7年)に創建され、最後の架け替えが行われたのは150年前の1868年(明治元年)。今回の復元工事後、次回の架け替えは半世紀以上先になる計画という。

 「史跡鳥取城址擬宝珠橋復元工事」の発注者は鳥取市、受注者は戸田建設で、水中梁製作は楢崎製作所。橋梁概要は幅6メートル×長さ36メートル。NSSCのSUS821L1は厚板、棒鋼合計で約50トン使用されている。

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