三井金属と九州大学、中低温領域で作動可能な酸化物イオン電導固体電解質型デバイス開発 自動車排ガスセンサなど低コスト化

 三井金属と九州大学は7日、600度以下の中低温領域で作動が可能な酸化物イオン電導固体電解質型デバイスの開発に成功したと発表した。一般的な白金電極とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いたデバイスに比べ電気特性が約27倍高く、作動温度領域が200度程度低くなることを実証した。自動車排ガス用酸素センサなどの固体電解質型ガスセンサや酸素分離膜、SOFC(固体酸化物形燃料電池)の低コスト化と低消費電力化が実現できるほか、今後のIoT社会における高性能な新規デバイスへの応用も期待される。現在はサンプル出荷を行っており、2023年をめどに量産開始を目指す。

 同共同研究では、三井金属が独自の製造技術を用いて開発した高い酸化物イオン電導性を示す配向性アパタイト型固体電解質に、九州大学が開発した高い酸素活性と混合電導性を有するペロプスカイト型構造の酸化物電極材料の設計技術と界面形成技術を適用し、中低温領域での作動に有利なデバイスの開発に成功した。

 三井金属が開発した固体電解質の酸化物イオン電導率は、600度でYSZの10倍以上、300度で1千倍程度高い性能を有する。九州大学が開発した電極材料は、400度以下での高い酸素活性と良好な混合電導性を有する。

 現在、一般的な固体電解質型デバイスは、白金電極材料と酸化物イオン電導性であるYSZが主に利用されている。だが、この固体電解質型デバイスは600度以上の作動温度が必要なため、より低温で作動するデバイスのニーズが高まっている。

 今回開発したデバイスは、従来のデバイスに比べ低温領域で機能するため、ハイブリッド自動車などの排ガス用酸素センサなどでヒーターなどの部品を使わずにセンサを作動させることが可能になると期待されている。

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