【熊本城のいま】石垣の安全性 崩落を出発点に

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石橋模型を使った実験を通じ、石垣の崩壊を防ぐには「中に詰められたものの動きを抑えたらいいのではないか」と話す山尾敏孝さん=熊本市中央区の熊本大
山尾さんによるアーチ状の石橋模型の崩落実験。中に砂利を詰めた模型が最も崩れた(動画を写真撮影しています)

 熊本城の石垣は、熊本地震で全体の1割にあたる約8200平方メートルが崩落した。石垣は造られた時期や修復の履歴、高さ、地盤の状況などそれぞれ「個性」があり、崩れた理由は一様ではない。ただ石垣の安全性の確保は、今後復旧していく上で欠かせない要素となっている。

 熊本大名誉教授で、熊本市の特別史跡熊本城跡保存活用委員会の委員、山尾敏孝さん(66)は、構造力学と耐震工学の専門家。約10年前から石橋の安全性について研究を続けており、地震後に石橋の崩落に関する実験をした。そこには、お城の石垣に応用できる要素が含まれていた。

 山尾さんによると、実験は長さ1メートル、幅27センチほどのアーチ状の石橋模型を造って、石積みの中に詰める材料を変え、揺らして崩れ方の違いを調べるもの。詰める材料は「砂」「砂利」「土」「砂と砂利の混合」の4種類を用いた。

 振動台に載せて揺らした結果、最も大きく崩れたのは「砂利」を詰めた模型。崩れ方が激しかった順に「土」「砂」と続き、「砂と砂利の混合」は周囲の石が緩んだりしたものの崩壊はしなかった。

 これらの結果を踏まえ、山尾さんは「砂利は震動により、よく動いたため外の石を押し出して崩壊した。一方で砂と砂利の混合は動きが少なかった」と説明。「崩壊を防ぐには、中に詰められたものの動きを抑えたらいいのではないだろうか」と推測する。

 一方、お城の石垣は表面に詰まれた石の裏に、人のこぶし大のぐり石がぎっしり詰められている。「例えばネットのようなものにぐり石を入れてまとまりを作ると、ある程度動きは抑えられる」と指摘する。

 山尾さんは実験結果について「あくまでひとつのヒント」としながらも、「崩壊を出発点にして安全なものを造る」という考え方を示す。「熊本城の石垣は文化財であり、さまざまな考え方がある。すべてを網羅することはできないが、私たち(委員)の役目はできるだけ安全を担保して、その時その時の一番いい方法を考え出すことだ」と話している。(飛松佐和子)

(2018年11月9日付 熊本日日新聞朝刊掲載)