金属行人(11月9日付)

 おそらく今年はもう来ないだろう。豪雨に豪雨、逆走もあった台風のことだ。改めてここ数年を振り返ると、年を追うごとに強烈さを増している。そう感じるのは小欄だけではないだろう▼鉄鋼業で毎年のように台風の影響を受けてしまうのが内航船による海上輸送だ。製鉄所から全国各地へ鋼材を届ける最大の輸送手段だが、波の高さが一定水準を超えると安全上の理由から出航するのが難しくなる▼陸上輸送に振り替える手段もあるが、内航船の鋼材全量を積み替えるわけにはいかない。通称「499船」と呼ばれる主流の内航船1隻の鋼材積載量は約1600トン。10トン積みのトレーラー160台分に相当することを考えれば、振り替えの難しさがよく分かる▼今年の台風では製鉄所の原料ヤードも被害を受けた。山積みの状態の原料炭が降雨の影響で崩れてしまい、埋もれた搬送用のベルトコンベアが一時停止するなど影響が出た。原料供給が滞れば、高炉の操業度も落とさざるを得ない。対策を講じる優先順位はこちらも高そうだ▼今年はもう来ないにしても、来年になればまた、まず間違いなく台風はやって来る。年々手ごわくなることを思えば、台風シーズンが過ぎ去った今から防御策を考えるぐらいがちょうどいいのかもしれない。

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