長崎県に世界遺産研究機関を 大阪大大学院・日高教授が講演  「保護に重要なことは教育」

 れきぶん世界遺産講座が3日、長崎県長崎市立山1丁目の長崎歴史文化博物館であり、世界遺産に詳しい大阪大大学院招聘(しょうへい)教授の日高健一郎氏が講演。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を通して世界遺産制度の意義を解説し、長崎県に研究機関を設立するよう提言した。

 日高氏は2004年、筑波大大学院の「世界遺産専攻」開設に尽力し専攻長を務めるなど、各地で世界遺産を通じた教育活動を実践してきた。世界遺産にとっての最大脅威を、日高氏は「未知の文化を『異』として拒否すること」と指摘。世界各地にある多様性に富んだ遺産を、「異」文化として捉えるのではなく、普遍的なものへ引き上げる必要を説いた。

 その上で、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の普遍的な価値について、「個人では抵抗できない強大な外圧に対して、人々が静かに、内なる力でその心を保ったことを証明する、心の遺産。これを大切にしなければいけない」と語った。

 紛争や政情不安による破壊など、遺産が消滅する危機的な状況についても触れ、「一つの遺産が消滅するということは、人間がつくってきた基本的な何かが失われるということ。世界遺産保護にとって最も重要なことは教育」と指摘。世界遺産を通して学ぶことがあるとして、長崎から世界へ発信する拠点「長崎世界遺産研究センター」の設立を提案した。

「世界遺産保護に最も重要なことは教育」と語る日高氏=長崎市、長崎歴史文化博物館

© 株式会社長崎新聞社