世界一過酷なマラソンレースを追ったドキュメンタリー、監督が語る

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サッカーしている青年たちの横を走るフィンランドのチャンピオン - Illumine Films

 世界一の長距離マラソンレース「The Self-Transcendence 3100 Mile Race」を題材にした注目のドキュメンタリー映画『3100:ラン・アンド・ビカム(原題) / 3100: Run and Become』について、サンジェイ・ラーワル監督が、10月26日、電話インタビューに応じた。

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 毎年、ニューヨーク・クイーンズのジャマイカで開催される「The Self-Transcendence 3100 Mile Race」は、なんと4,991キロも走る長距離マラソンレース。出場者は1日平均で約60マイルを52日間も続けて走らなければいけないという世界で最も過酷なマラソンレースでもある。本作は、そんな過酷なマラソンに挑戦した参加者と、フィンランドのチャンピオン、アシュプリハナル・アールトーらを追いながら、彼らが精神的な悟りに至るまでの姿を捉えたドキュメンタリー。

 この世界で最も過酷なマラソンレースを知ったのは、近所に引っ越してきたことがきっかけだったというラーワル監督。「今から21年前に、このレースが行われるクイーンズのジャマイカの近所に移り住んだんだけど、ちょうど、その年からこのレースが始まったんだ(正確には1996年からだが、その時は2,700マイルだった)。インド人の精神的指導者シュリ・チンモイによって始められたこのレースを、約20年間見てきた僕は、ランナーにとって本当に素晴らしいスピリチュアルな体験のできるレースであることに、心の底から気づかされたよ」そして、2015年に撮影を開始した。

長年レースを見守ってきたサンジェイ・ラーワル監督 - Nick Korompilas

 出場者がこのコースを走れるのは、朝6時から夜中の12時(あえて暑い時間を避けて走ることもできる)までの間で、その間はボランティアの人々が、出場者の食べ物や水分の補給を提供し、さらに健康管理のために医者も待機している。「これほどの距離を走るには、栄養管理、履物(シューズ)、身体的状況だけでなく、それ以上の精神的なエネルギーを持って臨まなければいけないんだ。それを持たないと単に苦痛だけのマラソンになってしまうからね。毎日、毎時間、一歩ずつが重要であることを理解したときに、ようやく楽しむことができるんだ。だから距離を楽しむというよりは、マラソンを通して深く瞑想(めいそう)に入っていく感覚が、本当の意味でエネルギーの補給になると思っているよ」出場者は1日1万カロリー摂取するように求められているそうだ。

 では、どのような基準で出場者のマラソン続行が不可能だと判断するのだろうか。また、どのような形で選手にレースを断念することを告げるのだろうのか。「ディレクターは、レースにおいてかなり重要な役目を果たしているね。まず、出場者を勇気づけたり、やる気を駆り立てたりしなければいけないし、そのうえ出場者が身体的に問題が生じ始めたことにも気づかなければいけない。ただ、このレースに参加している出場者は、毎日何十キロも走れるランナーばかりで、アスリートとしても身体能力の高い人ばかりだ。それでもディレクターはこれまでの体験を信じて、出場者には恐怖を与えることなく、勇気づけながらアプローチをしている」

 過去には、レース中にディレクターが割り込んで、ランナーを止めるときもあったそうだが、それは、このレースのためだけに出場者が無理をして、その後にダメージを受けることになる危険性があると判断したからだと解説。長年レースを見守り続けてきたラーワル監督ならではの視点で、大会ディレクターの出場者を尊重した決断や苦労を伝えた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)