仮借無き経済制裁のその先

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 昭和初期の東京・銀座通りの絵はがきには車、バスが走り7階建ての鉄筋コンクリートビルが立つ風景が写っている。車を走らせるには石油、ビルを建てるには鉄が必要だ。

 資源を持たない日本は石油も鉄も主に米国からの輸入に頼っていた。つまり資源を外国に依存している状況は当時も今も同じ。外国が石油も鉄も売ってくれないと国民生活は立ちゆかなくなる(安達弘著「あなたならどうする?歴史人物になってみる日本史」)。

 日本とは正反対の事情を抱えるのがイランだ。足元で湧く原油を外国に売って稼いだ外貨で必要なものを調達している。国家収入の約3割を石油関連産業に頼る国だけに買ってくれなければ原油がだぶつき、やがて国の息の根が止まる。

 トランプ米政権はイランの原油、金融、海運部門を標的にした制裁の再発動に踏み切った。これで核合意で解除されていた制裁が全面的に復活した。同政権はイランを孤立させて、ミサイル開発の制限も含めた新たな合意を狙うが、再交渉は極めて困難な情勢だ。

 80年前「くず鉄輸出制限」を皮切りに「同全面輸出禁止」さらに「鉄鉱石、銅、ニッケルなどの輸出禁止」へと厳しさの度を増していき「石油輸出の全面禁止」という仮借のない経済制裁を受けた日本はついに太平洋戦争に踏み切った。

 イランのロウハニ大統領は「われわれは経済戦争のさなかにある」と表明。防空軍事演習を開始した。国民は困窮、不況に端を発する抗議活動も頻発しているという。絵はがきになりそうな日常が失われるとき何が起きるか。背筋が凍りつく。