核軍縮逆行に「警鐘を」 賢人会議、14日から長崎で会合

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 核兵器保有国と非保有国の専門家が参加する核軍縮の「賢人会議」(外務省主催)の第3回会合が14、15両日、長崎市である。軍縮と安全保障の関係などが議題となる。ことし3月の前回会合以降、米国が中距離核戦力(INF)廃棄条約の離脱方針を表明するなど、保有国が核軍縮の流れに逆行する動きが相次いでいる。日本政府が目指す保有国と非保有国の「橋渡し」が見通せない中、どんな議論が求められるのか。論点を整理した。

 ▽後ろ向きな米

 「橋渡しが破綻し、迷走している」。非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN=アイキャン)」の川崎哲(あきら)国際運営委員は、今月国連で採決された日本政府の核兵器廃絶決議案が、現状を如実に表していると指摘する。

 政府は核兵器禁止条約に対して中立ではなく反対の立場を取った上で、保有国が訴える段階的な核軍縮の主張に同調。決議案は核軍縮の交渉義務を定める核拡散防止条約(NPT)6条は記したが、禁止条約に言及しなかった。

 その結果、禁止条約を推進するオーストリアなどは棄権した。一方、米国は安全保障環境などを理由に6条の明記に反発して棄権し、ロシアや中国も反対した。橋を架けるはずの双方の中心国に距離を置かれた。

 賢人会議は昨年度、NPT6条、米ロの核軍縮条約の重要性を提言した。だが、米国はことし10月、INF廃棄条約の離脱方針を表明。従来の核軍縮の法的義務の履行にすら後ろ向きな姿勢は、非保有国との溝をさらに深めかねない。

 川崎氏は「まず、保有国の核軍縮からの逆行姿勢に警鐘を鳴らす議論が欠かせない」と求める。広島の被爆者団体などは、保有国に禁止条約の批准を促していくことこそが廃絶への「橋渡し」だと訴える。

 ▽核抑止の是非

 保有国と非保有国の対立を招いてきた核抑止政策の是非もテーマとなる。

 保有国は、核による報復の脅しを通じた抑止力が安全保障に不可欠として速やかな廃絶を拒む。しかし、122カ国・地域の賛成で採択された禁止条約は、前文でいかなる核使用も国際法に反すると記し、使用や使用の脅しなどを禁止。核抑止政策からの脱却を迫り、核軍縮の前進を促す。

 会議では、「国家存立に関わる究極的な状況」などの条件を満たす場合、核使用が許されるかどうかも話し合われる。禁止条約が被爆地の訴えに応えて核使用を例外なく禁じるにもかかわらず、限定的に認める議論がなされれば、政府がさらに米国の「核の傘」を正当化するのではないか―。反核団体が警戒している。

 ▽北朝鮮の非核化

 6月の米朝首脳会談後、具体化が進まない「朝鮮半島の完全な非核化」の有効な方策についても議論が求められる。

 長崎市は長崎大を研究拠点に「北東アジア非核兵器地帯」創設を推進。日本、韓国、北朝鮮は核を持たず、この3カ国に対して米ロ中は核攻撃や威嚇をしないと法的に誓約し、相互に安全を保証し合う構想だ。

 昨年度の提言は「核抑止は長期的な国際安全保障にとり危険で、すべての国はより良い解決策の模索を」と求めた。同地帯の創設は、米国の「核の傘」に依存する日本の安全保障政策の転換にもつながり得る。長崎の訴えを踏まえた提言が発表されるかどうか注目される。(水川恭輔)

 <クリック>賢人会議 岸田文雄前外相の提唱で設立され、昨年11月に広島市で初会合を開催。核超大国の米ロ、核兵器禁止条約を推進するニュージーランドなど10カ国の元外交官や専門家17人が委員を務め、広島平和文化センターの小溝泰義理事長、被爆者の朝長万左男・日赤長崎原爆病院名誉院長も参加する。2回目の会合があったことし3月、これまでの議論を踏まえた提言が出され、保有国に核軍縮の交渉義務を課す核拡散防止条約(NPT)体制の強化などを求めた。