背筋がぞっと…飲酒運転の怖さ実感 無意識に上がるスピード、急ブレーキも [佐賀県]

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飲酒運転による悲惨な交通事故が後を絶たない。「少ししか飲んでいないから大丈夫」などと、ちょっとした気の緩みから手を染める可能性がある犯罪が飲酒運転だ。県警や自動車学校の協力で、県内で初開催された飲酒運転の体験会に参加し、危険性を学んだ。

体験会は10月27日、佐賀市新中町の佐賀城北自動車学校であり、警察の取材を担当する新聞やテレビの記者計6人が参加。同校で技能検定員を務める山口学さん(46)らに助手席へ乗ってもらい、校内のコースを飲酒前と飲酒後にそれぞれ運転して変化を調べた。

飲酒前の運転ではクランクやS字カーブ、見通しの悪い交差点などの各ポイントを比較的スムーズに通過。方向転換や一時停止も難なくこなし運転を終えた。

その後、30分ほどかけてビール約400ミリリットルと焼酎の水割り約100ミリリットルを飲んだ。呼気検査をすると、1リットル当たりのアルコール分は0・1ミリグラム。酒気帯び運転の基準値の0・15ミリグラムは下回ったものの、視界がふわふわとして定まらず、真っすぐ歩くことも難しい。

飲酒から約1時間後、先ほどと同じ車に乗って同じコースに臨むと、明らかに運転が雑になった。問題なく抜けられたクランクで脱輪。赤信号は見逃しこそしなかったが、気付くのが遅れ、急ブレーキをかけてしまった。坂道発進ではサイドブレーキがどこにあるか分からなくなるなど、信じられないミスもあった。

山口さんは「全体的に速度が速くなった。巻き込み確認も最初はよくできていたが、飲酒後は回数がかなり減った」と講評してくれた。「そんなに差はないように見えても、影響は出ている。平衡感覚もずれて安定感がない。視野も狭くなり、先へ先へという気持ちが強くなったようだ」

アルコールの数値は基準値以下で、酔っていながらも普段通りに運転しているつもりだったが、全くできていなかった。歩行者や他の車がいる公道で運転したら、右左折時に歩行者を巻き込んだり、スピードの出し過ぎで追突したりして、間違いなく事故の加害者になっていただろう。背筋がぞっとした。

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アルコール依存治療などを専門とする肥前精神医療センター(吉野ケ里町)の武藤岳夫精神科医長は「基準値以下のアルコールでも脳に与える影響は大きく、運転に必要な能力は確実に落ちる」と飲酒運転に警鐘を鳴らす。「運転は周囲の確認やハンドル操作を同時に行う高度な作業。アルコールは低い濃度でも中枢神経を抑制し、動体視力や判断力、集中力などを低下させる。どこが欠けても運転には支障が出ます」

県警によると、昨年の飲酒運転者の物損事故件数は76件と過去10年間で最多。県内の今年9月末までの飲酒運転摘発数は、前年同期比3件増の148件に上る。県警交通企画課の前川直管理官は「数値が低くても全く安心ではない。一滴でも飲んだら乗らないことを徹底すべきだ」と話した。

=2018/11/11付 西日本新聞朝刊=