社説(11/11):防災・減災 震災7年8ヵ月/伝承の重みを再確認したい

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 厳しい現実を間近に経験した大人でも記憶は淡くなりつつある。当時幼児ならば実感がないのも無理はない。

 「それでも」と東日本大震災で甚大な犠牲と被害が出た岩手県大槌町の被災者、会社経営の男性(65)が嘆く。町内の中学2年生と最近語り合う機会があったが、幼稚園年長で被災した生徒らは一様に「震災のことはよく分からない」と漏らしたという。

 めまぐるしく変わる復旧復興の光景こそが日常になり、被災以前や被災当時のことに格別の意識は向かない。学校でも特別の伝え方はされていない、と生徒は答えた。

 つらい思い出になるから配慮は必要になるが、この世代が足元の大惨事にきちんと向き合う機会がないまま7年、8年と過ごそうとしている現実に触れ、がくぜんとした。

 「震災の体験と教訓が生徒らに伝わらなければ、どうなりますか。犠牲と混乱はまた繰り返されるのではありませんか」。男性は訴える。

 震災から7年8カ月、同じような焦りと嘆きの声を被災地でよく耳にするようになった。復興のステージが最終盤に入り、被災の痕跡があちこちで激減する中で世代交代が進む。震災が「遠い過去」になりつつあることへの焦りであり、それにうまく対応できていないことへの嘆きだ。

 語り部活動の会が各地でできたり、学校によっては校内の震災伝承と防災教育に力を入れたり、個別に懸命の取り組みが進められてはいるが、散発の努力にとどまる。

 伝承の重みを被災地全体で確認し、総体として伝え継ぐ力を発揮しようという機運まで至らない現実がある。

 基盤になるはずの施設関連でも動きは鈍い。陸前高田市の国営復興祈念公園内に来年9月の開館を目指して整備される「津波伝承館」では、展示内容や運営形態がいまだ定まらないことに批判が出ている。宮城県でも、石巻市に整備される国営公園について展示施設も含めた運営の詳細は不透明なままだ。

 インフラや施設整備偏重で来た政府の復興方針のひずみであり、整備後を託される自治体現場の対応が追いついていない。自治体からは「そもそも復興庁には、伝承に必須のソフト事業への理解が乏しい」と不満も漏れてくる。

 伝承では既存活動や施設の連携、語り部の育成などが鍵になる。それらを総合調整しながら支援し、統合的に受発信を引き受ける拠点組織が不可欠になるはずだが、必要性を強調する有識者会議の報告書をことし3月にまとめた宮城県でも、設立に向けた具体的な動きはまだない。

 伝承の岐路となる発災10年まであと2年と少し。ぼんやりと節目を迎えれば、個別の活動は下火になり、内外の風化はさらに進む。記憶・記録と教訓を未来にどう伝え継ぐか。被災地が負う最重要課題の重みを再確認したい。