中国・新型対艦巡航ミサイル「CM-401」で揺さぶる東アジアの将来

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2年に1度の「中国国際航空航天博覧会」(通称:珠海航空ショー)、12回目となる今年は11月6日~11日まで開催された。中国国内外の航空機、ミサイル、ロケットだけでなく、装甲車輛等、地上装備のメーカーも出展。

特に、主催国である中国自身の兵器産業の発展ぶりを、国内外に印象付けることになった。
J-20・J-10・Y-20・H-6K

J-20戦闘機

航空機の飛行展示では、中国国産のステルス戦闘機、J-20が編隊で飛行し、戦力化をアピールしていた他、J-10戦闘機の1機が、空中で機敏な機動性を示し、噂されていたジェットエンジンの噴射の方向を偏向する技術の実用化を窺わせた。

J-10戦闘機

そして、米空軍のC-17輸送機よりもわずかに小さいながらも、約66トンもの貨物を運べるという、Y-20大型輸送機も会場で、離発着を行っていた。中国は、様々な分野の航空機を同時進行で開発できるという事なのだろう。

Y-20大型輸送機

地上展示では、中国のH-6Kらしき爆撃機が展示され、その主翼の下には、K/AKD20(GP)と書かれたミサイルのようなものがぶら下がっていた。

K/AKD-20巡航ミサイルの本物なら射程1500km~2000kmと言われており、昨年12月のようにH-6K爆撃機が日本海の真ん中に、このミサイルを搭載して進出すれば、日本全土が射程内になることになる。

K/AKD20(GP)と書かれたミサイルをぶら下げたH-6K

新型対艦弾道ミサイル「CM-401」の能力

キャニスターに入った、CM-401対艦弾道ミサイル

さらに興味深いのが、屋内に展示されていた「CM-401」対艦弾道ミサイルだ。CM-401ミサイルの実物大模型を入れたキャニスター(箱型容器)とともに、キャニスター2個を搭載した8輪のCM-401の移動式発射機と見られる車両が展示されていた。

CM-401の移動式発射機と見られる車両

さらに屋外には、キャニスター2個を斜めに立てる、軍艦の甲板への搭載装置も展示されていたという。

米国含め西側では、弾道ミサイルというと、弾道を描いて飛翔し、動かない標的の上に、とんでもない速度で落ちていく兵器だ。速度が速すぎるが故に、動く標的を直撃する弾道ミサイルは、NATO諸国などの西側では見当たらない装備。

しかし、中国は既にDF-26というグアムにまで届く最大射程4000kmの弾道ミサイルを配備して、海の上を移動する空母のように大きな軍艦を狙えると主張している。

DF-26

このDF-26は全長14メートル・直径1.4メートル、重量は20トン近いとみられ、地上の移動式発射機から発射される。
CM-401の正確なサイズは不明だが、全長は4~6メートル、直径0.85メートル程度だろうか。DF-26に比べれば小さく、確かに軍艦に載るかもしれないサイズだ。

CM-401の横に置かれていたイラスト

キャニスターの横に展示されていた説明パネルによれば、射程は15kmから290km。標的に接近した最終段階では、マッハ4から6、つまり極超音速に達することもあるという。

これでは迎撃は困難だろう。さらに興味深いのは、そのパネルに描かれていたイラスト。
CM-401の標的「こんごう型に似ている」
1隻の軍艦が標的にされたようにもみえる、このイラストは、空母よりは、はるかに小さい駆逐艦または、護衛艦のような軍艦でも標的にしうることを示唆しているようだ。

こんごう型?が標的に…

海上自衛隊トップ・村川海幕長:
海上自衛隊のこんごう型に似ている。ただし、護衛艦は外洋を航海するときは自衛艦旗を掲揚する。この船は自衛艦旗を掲揚していないので『こんごう』かどうかはコメントは控える。
(11月6日・記者会見より)

つまり、こんごう型と断定できないが、似ているということ。こんごう型といえば日本の弾道ミサイル防衛の要だ。北朝鮮が弾道ミサイル発射の兆候を示すたびに、こんごう型4隻のいずれかが警戒についていたとされる。
「2019年ごろに就役が予想される1万トンの巡洋艦「RENHAI」級(055型)は、長距離対艦巡航ミサイル・長距離対空ミサイル、それに装備可能となれば、対艦弾道ミサイルや地上攻撃用巡航ミサイルも発射できるようになるだろう」
(米国防省作成・「中国の軍事力2018」より)
CM-401は、2019年就役の中国軍艦055型に搭載か
055型が、CM-401対艦弾道ミサイルを装備すれば、その射程内で、日米のイージス艦が、北朝鮮弾道ミサイル警戒を行うことは、安全とは言えないだろう。

055型も軍艦である以上、海上を動き回ることが考えられる。055型に搭載される対艦弾道ミサイルの射程外で、弾道ミサイル警戒を行うことは、従来よりも行動が制約されることを意味しかねない。

さらにCM-401型の射程は、最大290kmと説明されているわけだが、これは、国際的なミサイル輸出及び技術の輸出を規制する取り組み、MTCRを意識したものとみられる。中国は署名していないが、MTCRでは、射程300km以上は輸出できないからだ。

従って、中国海軍用に開発された対艦弾道ミサイルの最大射程は、290kmよりはるかに長く、珠海航空ショーでは意図的に射程を短くした、CM-401計画を提示した可能性もあるだろう。

すると、日米の弾道ミサイル警戒は、055型の就役とともに、さらに制約される可能性が出てくるだろう。その後ろには、地上に展開するDF-26型弾道ミサイルもあり、米空母打撃群の動きも、かなり制約されることになるのではないか。
さらに、今回の珠海航空ショーでは、主翼が折りたためる無人機「HK-5000G」も展示された。人民日報と環球時報のサイト(11月9日)は「HK-5000Gが(ミサイルや爆弾など)5トンの貨物を積み、12時間の飛行が出来る」と報じた。

主翼を折りたためるようにしたのは、空母での運用を考慮した結果だが、中国の現在の空母「遼寧」は、航空機を打ち出すカタパルトがないスキージャンプ方式なので、HK-5000Gの運用は難しい。だが、将来の3隻目の中国国産空母は、電磁カタパルトを装備するとみられ、HK-5000Gは運用可能となりそうだ。

遼寧

しかし、このような対艦弾道ミサイルの傘と新空母に依存した、中国海軍の海洋進出は、米国が射程500kmから5500kmの地上発射弾道ミサイルや巡航ミサイルの開発・保有・配備を禁じたINF条約に縛られた状態であればこそ、中国に優位に働くという側面もあるだろう。
印・モディ首相「核の三本柱=トライアドが完成」

インド国産ミサイル原潜「アリハント」

ところで、インドの国産ミサイル原潜「アリハント」が、初のパトロール航海を終えて帰還したことについて、モディ首相は11月5日、以下のようにコメントした。

モディ首相:
今日という日は“核の三本柱=トライアドの完成”が記録された歴史的な日である。核の脅迫に対し強力に対応する。今回の成功は、インドの安全保障を何倍も強力にした。

K-15弾道ミサイル

排水量6000トンのアリハントは2016年に就役し、射程700kmのK-15弾道ミサイル12発、または、射程3500kmのK-4弾道ミサイル4発を装填できるとされている。

インドが核兵器を、しかもトライアドの完成と自己評価したのは、アメリカのトランプ政権が中国の動向をにらんで、INF条約からの離脱の意向を明らかにしたのと並行しているようでもあり、中国の対艦弾道ミサイルによって予想されていた優位性は今後、変化するかもしれない。

【動画】「能勢伸之の週刊安全保障」(11月10日配信)

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