【コラム・天風録】断水への我慢も限界

©株式会社中国新聞社

 廃業して周防大島に帰郷した一杯船主の日々を昔頂いた歌集に思う。色塗りし津田式ポンプを野に据ゑて遊びのごとく水を汲上ぐ(宮本勝人=かつと)。さびた古道具を直して水を畑にまく。陸(おか)の暮らしも結構忙しい▲この島に、こちらは定年で帰った知人が先日、本紙広場欄に投稿していた。井戸水をくみ、民泊する子どもたちのために直した五右衛門風呂を沸かし、ご近所に入ってもらったという。大島大橋への外国船の衝突によって、断水と通行規制が3週間近くも続いているせいである▲満足に湯あみできないだけではない。消火栓が使えず、ちょっと風が強まると消防車が大橋を通れない恐れがあり、火が怖い▲幸い、広島方面からも給水車が渡ることになり、重い水を家庭へ運ぶボランティアも力を出している。島で受け入れるはずだった修学旅行の民泊は、備北の庄原市で分担してくれるという話も報じられてほっとする。子らも心機一転、里山暮らしを楽しんでもらえるとうれしい▲五右衛門風呂といえば、熱さに我慢した記憶がある。木の底板をうまく沈めて入っただろうか―と知人はご近所を気遣っていたが、断水への我慢もそろそろ限界では、と心配になる。