第1回中国国際輸入博覧会で日本を再発見

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第1回中国国際輸入博覧会で日本を再発見

 8日、ユニークな形をした「おもしろ消しゴム」のイワコーのブースで、体験イベントに参加する来場者。(上海=新華社記者/岳晨星)

 【新華社上海11月11日】第1回中国国際輸入博覧会(輸入博)が10日午後、上海市で閉幕した。上海国家会展中心(国家エキシビション・コンベンションセンター)では、この日の夜も明かりが煌々と輝いていた。3600社余りの出展企業や172カ国・地域、国際機関の代表、昼夜休まず働いた中国人スタッフなど、それぞれが離れがたい思いを胸に抱いていた。

 中日平和友好条約締結40周年の今年、450社余りの日本企業が輸入博に出展。日本は出展企業数が最も多い国となった。6日間の会期中、日本の企業や企業家たちの最大の願いは、中国の人々に「メイド・イン・ジャパン」への理解を深めてもらい、また、日本企業が中国市場への理解を深めることだった。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)上海事務所の小栗道明所長は、相互理解を深めることが、両国の人々の間で特に必要だと指摘した。

 「輸入博で日本を再発見した!」というのが中国消費者、特に若者からの声だ。

 ▽小さなブースと大きな市場

 中国の改革開放とほぼ同年齢の瀧本陽介氏が代表取締役を務めるヘルスケアシステムズは、医療機器・医薬保健ホールで約5平方メートルの標準ブースに出展していたに過ぎず、約30万平方メートルの輸入博の会場ではごく小さく見えた。

 輸入博2日目の午前、瀧本氏は中小企業の代表として関連イベントの日中「匠×イノベーション」連携フォーラムで発言した。彼の前にはトヨタや伊藤忠商事、オムロンなど、有名大企業の責任者が発言しており、パネリストで中小企業の代表は瀧本氏一人だった。

 実際のところ、瀧本氏は決して「孤独」ではなかった。ヘルスケアシステムズのような中小規模の出展企業200社余りがジェトロを通して、今回の輸入博に参加を申し込んでいるのだ。

 瀧本氏は自社について、名古屋で創業したハイテク企業で、今年で創業10年目になると紹介。8月に上海に会社を作ったばかりで、進出して間もない時期に、輸入博のような大型イベントが重なったのはとても幸運だと語った。

 自身がこれほど多くの有名企業の担当者と並んで発言したことについては、「緊張したが、それよりも光栄だった」と振り返った。

 瀧本氏は三重県松阪市出身で、起業を選んだのは、指導教授の実験室のプロジェクトを日常生活に役立てるものに変えるためだった。当初、金沢大学で学び、その後インドネシアで学問を深め、帰国後、博士課程に進んで間もなく中退。起業の道を選んだ。

 もし瀧本氏が中国人であれば「創客」(メイカー、起業家)と言われただろう。この「日本の創客」は、輸入博で未病領域の検査事業を売り込んだ。主に腸内環境や塩分など4項目の検査サービスを提供。これらの検査は更年期障害や乳がん、老年性認知症などへの注意を喚起する役割を果たす。

 瀧本氏のブースは数多くのジェトロのブースの中でごく一般的なものだったが、彼はこの事業が中国で世界最大の市場を掘り起こせると信じている。

 瀧本氏は1995年に初めて中国を訪れた時にやって来たのが上海で、当時の交通状況はかなり無秩序だったと振り返り、今の上海の変化は想像を超えており、中国のこの発展スピードこそ、ベンチャー投資を受ける日本の中小企業が中国市場に信頼を抱く要因だと説明。日本では完成するまで3年かかることが、中国ではサイクルを短縮できると述べた。

 ▽「匠×イノベーション」

 瀧本氏と彼の会社は、輸入博で決して「孤独」ではなかった。

 中国市場への未病領域検査事業の売り込みに熱意を見せる瀧本氏と同様、輸入博の医療機器・医薬保健ホールには他にも10社余りの日本の中小企業ブースが並んでいた。

 彼らの中には中国大陸に初めて来た企業も多く、そのブースの「目と鼻の先」にある多国籍医薬品大手と比べるとごく小さな存在だが、イノベーションと奮闘の精神にあふれている。

 瀧本氏のブースの「隣人」の一人、65歳の中島憲二氏は、この輸入博でただ1種類の製品だけを売っている。中島氏の会社が発明し、特許を持つ歯周病ケア専用のロールブラシだ。中島氏は大阪府から授与された「匠」のロゴマークを自分の名刺にも印刷し、この「匠」の字をとても大切にしている。

 ロールブラシは特許発明に属し、会社のオーナーと社員一人のアイデアから始まった。この社員は歯周病を患っていたため、ずっと歯ブラシの改良による体質改善を願ってきたのだ。

 ロールブラシ誕生後、社内では定価について議論が起きた。中価格帯に設定して人々に広く恩恵を及ぼすべきだと主張した中島氏は、この発明を深く愛し、守ろうとしているだけでなく、たゆまぬ売り込みで、現在は会社の共同経営者の一人にもなっている。そしてロールブラシもまた、当初の単純な回転のささやかな発明から、ブラシ部分の改良を絶えず続け、また柄の部分を折り畳み式にして携帯時の利便性を高めた。

 中国市場進出について中島氏は、良い製品が普及し、歯をケアする理念がより広く伝わってほしいとの希望を述べた。

  この歯ブラシのブースは目立つものではないが、連日多くのバイヤーが前を通り、ブースを囲んでいる。中島氏は年配で髪も染めているが、常にグレーのラシャのスーツを身に付け、いつでも上着のポケットから愛するロールブラシを取り出せる状態だ。

 中島氏は中国大陸市場に製品を投入するには今が絶好のタイミングだと指摘。改革開放からここまで年月が経ち、中国人の健康意識も高まり、歯のケアに対するニーズも伸びていると述べた。さらに、中国大陸市場に製品を投入する理由として、一般の人々もお金に余裕ができ、歯ブラシの値段に対して昔ほど厳しくなくなったことと、人々が友好的であることを挙げた。

 中島氏が歯ブラシを売る小さなブースの数十歩先には、日本の有名な武田薬品工業やロート製薬などの大手メーカーのブースがあった。大企業ブースが軒並み並び、各社とも「匠×イノベーション」について自分の売り文句を用意していた。

 ▽手を携えて共に未来をつくる

 輸入博出展の空き時間に、瀧本氏や中島氏ら中小企業の代表者も、機会を見つけて各ホールを回っていた。彼らがうれしく思ったのは、中国初の輸入博で、7つある企業向け展示ホールの全てに日本企業のブースが出ていることだ。

 中には百年、またはそれ以上の歴史を持つ伊藤忠商事や花王、パナソニック、ヤマザキマザックなどの企業も多くある。また、中国の改革開放の歴史を見てきた証人と言えるキヤノンや富士フイルム、オムロン、トヨタ、ホンダなども出展している。

 輸入博に来場した中国の若者は、将来の市場を見据える日本企業の眼力に感服していた。パナソニックの透明なテレビや、三菱電機ブースで扇子を持って踊るロボット、AGCグループのブースの「ガラスの太鼓」、さらにオムロンの卓球ロボット「フォルフェウス」など、どれも目を引くものばかりだ。

 輸入博で最初の出展契約を結んだ不二越は、ブース面積が最も広い企業の一つで、自動車用のスポット溶接協働ロボットの特別展示もひときわ迫力を放っていた。

 輸入博では自動車ホールも注目を集め、多国籍自動車企業が続々と最新の主力モデルを披露していたが、中でもトヨタは既に中国市場で足場を固める「モデル転換ショー」を完成させていた。水素エネルギーの乗用車やバス、フォークリフト、水素ステーションなど全てが揃い、また自動運転技術やサービス、リハビリ、コーヒーサービスなど多機能を備えたロボットも並んでいた。

 北京から来たあるバイヤーは「トヨタブースが教えてくれたのは、トヨタは自動車だけの企業ではなく『スマートシティー』の建設にも携わっていることだ」と語った。

 「人と機械が融合する未来へ」「未来の知へ向かって」など、日本企業の出展スローガンからも、未来の中国と世界に目を向けた企業の産業配置が見て取れる。

 中国の男性はハイテクやスマート化した未来志向の製品を好む傾向があるのに対し、中国の若い女性は日本のグルメやアニメ漫画などに強い関心を抱いている。上海外国語大学日本語学科の徐紫薇(じょ・しび)さんは、輸入博ボランティアの一人として、いくつかの展示品に触れる機会があった。高島屋の織物エリアを訪れ、続いてジェトロが設けた「アニメ漫画カフェ」でひと休みした徐さんは、ずっと興奮しっぱなしだった。

 しょうゆや清酒、ビール、スイーツ、水産加工品、アイスクリームなど…。中国四川省の五つ星級シェフが関心を持っているのは、こうした買い付けリストだ。完全な統計データではないが、上海市中心部には数千軒の日本料理店が集まっており、これらの店舗も皆、輸入博の潜在的な顧客となっている。

 上海という都市は、日本企業に友好的かつ寛容的で、都市の経済データの高い成長などが日本企業の輸入博参加を呼び込む要因となっている。

 大企業は大型受注に期待し、小企業も「ささやかな夢」を抱いている。中島氏が出資するこの歯ブラシ特許を有する企業も、現在のところ、年間生産量と売上高はいずれも30万~50万本前後で、大半は日本市場に出回り、後はタイや中国台湾地区への供給となっている。中島氏は、もし中国大陸市場を開拓できれば、中国大陸で年間120万本を生産できると見込んでいる。

 瀧本氏と彼の会社は来年、関連サービスを投入予定で、その後3〜5年かけて段階的に、未病領域の検査サービスを中国各地に展開していく予定だ。

 花王など有名日本企業は、既に来年の第2回輸入博へ向け、準備を進めていることを明らかにした。

 三菱電機の執行董事・中国総代表の富澤克行氏は「輸入博の開催は中国が世界に提供する開放的な貿易プラットフォームだ」と語っている。(執筆:許暁青、黄揚 作成協力:単涛、沈氷潔、胡暁格、岳晨星)

第1回中国国際輸入博覧会で日本を再発見

 8日、ベンチャー企業、ヘルスケアシステムズの展示ブースで取材に応じる瀧本陽介代表取締役。(上海=新華社記者/単涛)

第1回中国国際輸入博覧会で日本を再発見

 6日、不二越のブースに展示されたスポット溶接協働ロボット。(上海=新華社記者/岳晨星)

第1回中国国際輸入博覧会で日本を再発見

 8日、オムロンの卓球ロボットと対戦するスタッフ。(上海=新華社記者/岳晨星)

第1回中国国際輸入博覧会で日本を再発見

 8日、AGCグループのブースで「ガラスの太鼓」を叩くボランティアスタッフ。(上海=新華社記者/岳晨星)

第1回中国国際輸入博覧会で日本を再発見

 9日、高島屋のブースに展示された伝統染織の生地を使ったスーツとドレス。(上海=新華社記者/岳晨星)

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 6日、パナソニックのブースで放送スタジオ映像システムを体験する来場者。(上海=新華社記者/岳晨星)

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 8日、エクスケアのブースで自社製品を見せるスタッフ。(上海=新華社記者/岳晨星)

第1回中国国際輸入博覧会で日本を再発見

 8日、トヨタのリハビリ機器のデモンストレーションをするスタッフ。(上海=新華社記者/岳晨星)